「今年の漢字」5度目の「金」に違和感…世相を反映しているはずなのに共感されなくなった理由
「一年間の出来事を振り返る」という企画自体に無理
2024年の「今年の漢字」が「金」に決まりました。「金」はオリンピックが開催された年に、過去4回選ばれており5回目。1995年に始まり、今年30回目を迎えた「今年の漢字」は、その年を象徴する漢字一字を全国から募集。応募の最も多かった漢字を、京都・清水寺で貫主(かんす)が揮毫(きごう)します。流行語やヒット商品などのブームは、世相を反映していると言われるものの、選考結果を見て「どこではやってた?」「ちょっとピンと来ない」と拍子抜けすることも。人々の「共感ポイント」とズレが生じている理由と対策について、「今年の漢字」を企画・発案したPRプロデューサーの殿村美樹さんが解説します。 【歴代の今年の漢字一覧表】「金」や「税」など過去に複数回選ばれた漢字も 「今年の漢字」の立ち上げに携わったのは1995年。あれからおよそ30年が経ちました。私はずいぶん前に離れたので、今では毎年懐かしさに浸りながら、「今年の漢字」を年末の風物詩に育て上げた主催者様に敬意を表しています。 ただ最近、発表される漢字と人々の認識にズレが生じて「ちょっとピンと来ない」と感じるケースが増えてしまいました。 原因は、インターネットやSNSの急速な普及で情報量が爆発的に増加し、人々の価値観と認識が多様化したからに他なりません。 「今年の漢字」が始まった1995年はWindows95が発売された年。「インターネット元年」と言われ、この年を境に情報の伝わり方が劇的に変わりました。そんな中で、当初は人々の心に響いた企画が、徐々に霞んでしまうのは仕方ありません。すでに「一年間の出来事を振り返る」という企画自体に無理が生じているのです。 解決策はただ一つ、人々の記憶が多様化した過去ではなく、誰もが幸せを願う未来を語る企画にブラッシュアップするしかありません。「今年の漢字」も「過去を表す漢字」から「未来を表す漢字」へ進化する方が共感を得やすいでしょう。 かといって企画スキームを変える必要はありません。世界でも珍しい表意文字・漢字だからこそ、人々の意思を表現できるのです。その醍醐味は大切にしなければなりません。