【今夜放送『光る君へ』44話は「望月の夜」】道長も見た月に潜む「地球との“ただならぬ関係”」 “月の誕生”に関わる、重大な「3つの説」とは?
ただ、この「親子説(ジャイアント・インパクト説)」にも、まだ解決すべき課題が残っています。 地球のことを「母なる大地」と呼ぶこともあるので、地球を「母」、月を「子」、衝突してきた天体を「父」とすることにしましょう。 さきほど、月と地球がとても似ているため「夫婦説」は却下と言いましたが、問題なのは、月が地球に似すぎていることです。月はとびっきりの母親似で、父親の面影が見当たらないのです。 コンピューター・シミュレーションによる研究では、飛び散った破片には、父親である天体のかけらもかなり含まれていると予想されます。そのかけらが集まって月になったとすると、月の岩石部分にも、父親の天体の痕跡が残るはず。しかし、それが見当たらないのです。
「衝突の角度や回数の関係で、母親似になった」「もともと父親と母親が似ていた」「どこかに必ず父親の痕跡が残っている」など、いろいろな可能性を検討する研究が、いまも行われています。 月が生まれる前の地球は、いまとは違って慌ただしい世界でした。 地球の1日は24時間ではなく、6時間でした。いまの4倍の速さで自転をしていたのです。 月が生まれたことで、地球と月は重力の影響を及ぼし合うようになります。 この月の重力の影響で、地球の自転は次第に遅くなり、現在の24時間に落ち着いたのです。まるで親が子どもと手をつないで、ペースを合わせながらゆっくり歩いているようですね。
もしも月がなかったら、太陽の重力の影響しかなかったので、いまごろ1日は8時間くらいになっていたでしょう。 ■地球は「月の重力」により環境が安定した さらに、かつての地球は、自転軸が大きく傾いていました。 こちらも月の重力の影響で、自転軸の傾きがなだらかになり、気候が安定しました。もしも月が生まれていなかったら、激しく変動する環境のなかで生命はいまのように繁栄していなかったかもしれません。 つまり、月が生まれていなかったら、私たちもいなかったかもしれないのです。そう思うと、月と地球の結びつきがいっそう深く感じられますよね。