50年ぶり「琴桜」勝利お預け 改名初日白星で飾れず「しっかり切り替えたい」
◆大相撲 ▽夏場所初日(12日、東京・両国国技館) 琴ノ若から改名した大関・琴桜(26)=佐渡ケ嶽=が黒星発進となった。西前頭筆頭・大栄翔(30)=追手風=に押し出された。今場所から祖父で元横綱の先代師匠のしこ名を継承したが、初日を白星で飾ることはできなかった。途中休場明けの照ノ富士(32)=伊勢ケ浜=ら、1横綱4大関が全て敗れる大波乱のスタート。出場した5人以上の横綱、大関陣の総崩れは、1横綱5大関だった2006年秋場所6日目以来で、初日に限れば昭和以降初の事態となった。 館内の歓声はため息に変わった。琴桜は大栄翔に敗れると力なく下を向き、首をかしげた。左を差しにいったがつかまえきれず、押しに転じた。しかし攻めきれない。最後は強引に左で小手に振ろうとしたが効果は薄く、押し出された。支度部屋では報道陣の質問にしばらく沈黙した後に「(攻めについては)いつもどおり。必死に取っているので…」と絞り出した。 元横綱の先代・琴桜が現役最後の相撲を取った1974年夏場所3日目以来、50年ぶりに「琴桜」が土俵に上がった。土俵入りでは母校・埼玉栄高から贈られた“大関仕様”のデザインに新しこ名が刺しゅうされた化粧まわしで登場。大きな歓声を浴び、取組前には「琴桜」とアナウンスされると、自然と拍手が起こった。だが初日からつまずく結果に。緊張感はあったか、との問いに「集中していた。関係ない」と場所前から患ったヘルペスで赤く腫れた唇を気にしながら、表情は険しいままだった。 出場した5人以上の横綱、大関陣の総崩れは06年秋場所6日目の1横綱(朝青龍)、5大関(白鵬、千代大海、魁皇、琴欧州、栃東)の6人が喫して以来。初日では昭和以降初の事態となった。場所前の今月7日には出稽古に来た大の里に2勝6敗と苦戦。詳細は明かさなかったが、自ら本調子ではないことを示唆した。春巡業では左足首を気にする場面があるなど万全ではない様子だった。その予感が悪い方向で的中。もちろん琴桜一人の責任ではないが、総崩れの一つの原因となった。 大波乱の幕開けに高田川審判部長(元関脇・安芸乃島)は「まさか横綱、大関の5人が全て負けるとは思わなかった」と驚きを隠さず。一方で「挽回してほしい」と上位陣の奮起を期待した。「初日なのでしっかり切り替えたい」と琴桜。偉大な祖父から受け継いだしこ名で、次こそ勝ち名乗りを受ける。(三須 慶太) ◆先代・琴桜の大関初白星 新大関として臨んだ1967年九州場所初日(11月12日)に、東前頭2枚目・藤ノ川と対戦。3秒7で突き出して完勝した。この場所は14日目に勝ち越し、8勝7敗で終えた。
報知新聞社