石破政権では日本経済は2025年も復活できない
総選挙の争点の1つは、財政政策である。元々、与党内では財政ルール(債務拡大抑制)の緩和を主張するSPD(社会民主党)や緑の党と、財政規律の堅持を主張するFDP(自由民主党)の意見対立で連立内閣が崩れて、今回の不信任決議に至った。 SPDは、総選挙でも引き続き拡張的な財政政策を主張するとみられる。税制では、富裕税復活を除けば、食料品の付加価値税率引き下げや投資促進税優遇などを主張しており、現在の厳格な債務拡大ルールの改正が争点になりそうである。
主要先進国の中で、もっとも財政規律が厳格に運用されている同国では、コロナ禍後に緊縮的な財政政策に転じた中で経済停滞が深刻になり、財政政策の方針が政治的な争点になっているわけだ。もし財政政策の機動的な運用を主張するSPDなどが総選挙で勝てば、財政政策はより拡張的になり、2025年に同国経済が停滞から脱するシナリオが浮上する。 財政政策や税制が政治の主要争点となっている点は、日本も同様である。「国民民主の要求が実現しないなら日本は後進国だ」(12月10日配信)でも述べたが、国民民主党が主張する基礎控除引き上げなどの減税は、実際にはインフレ率に応じた必然的な政策措置にすぎない。
だが、これに自民・公明の政権側は所得税が課される年収の最低ラインである「103万円の壁」の見直しについて、123万円への引き上げを明記したものの、国民民主党が主張する178万円との差は依然大きく、歯止めをかけようとしている。 この点の与野党の折衝の行方は流動的だが、自民党の案である123万円への引き上げに、日本維新の会が教育無償化政策の前進などを条件に賛成する方向でまとまるとの観測もある。 筆者は当初、世論の支持を得た国民民主党による「正論」に、自民党は抗せないだろうと予想していた。だが、日本維新の会が新たなプレーヤーとして割り込んでくる予想外の展開になった。