アリバイありも「100%やっている」と9時間拘束…「誤認逮捕」頻発の原因となる捜査方法の問題点とは?
警察による誤認逮捕が後を絶たない。「日常的に起きている」という弁護士もいる。ノンフィクション作家・久保博司氏の著書「誤認逮捕」(幻冬舎新書)には、2010年に起きた誤認逮捕の件数は343件と記されているが、統計はなく、正確な数字はわからない。先月11日に発覚した福岡の誤認逮捕では、アリバイの確認もせずに9時間にわたって身柄を拘束し続けた。なぜ、間違えて逮捕するという失態がこれほど頻発してしまうのか…。 逮捕は、逃亡や証拠隠滅を防ぐために被疑者を強制的に拘束する処分をいう。事件の性質にもよるが、犯人に間違いないのなら、手段として有効であることは間違いない。逆にいえば、「誤認」ならば大変に問題が大きいといえる。 「そもそも、犯罪捜査は必ずしも容疑者を逮捕しなければならないというものではありません。身体不拘束原則といって、逮捕・勾留のような身体拘束はあくまでも例外的に運用されるべきだと思います」 こう明かすのは、裁判官を経て弁護士へ転身した西愛礼弁護士。犯罪者がいれば逮捕するのが普通との認識が一般的と考えられるだけに、やや意外な印象だ。
誤認逮捕の大きな原因は”白の捜査”が行われないこと
著書「冤罪学」では「冤罪の再発を防ぐ失敗学として読んでほしい」と全ての法曹家へメッセージを送っている西弁護士。同氏が、誤認逮捕の大きな原因として指摘するのがその捜査方法だ。 「捜査機関がこれまでに検証した全ての冤罪事件で裏付け捜査の不徹底ということが言われています。そのうえで、捜査機関は有罪を裏付ける積極証拠ばかりに目が行ってしまいますが、その有罪の証拠に穴があるのではないかとか、無罪の証拠があるのではないかという消極証拠に関する”白の捜査”が行われないことも誤認逮捕の大きな原因なんです」 冒頭の福岡の事案では、警察は防犯カメラの映像などをもとに男性を公然わいせつ容疑で逮捕。しかし、男性は犯行時刻に事件現場と別の場所にいたことがわかった。それでも「100%あなたがやっている」と連行されたという。 まさに防犯カメラの映像という「積極証拠」が正しいんだと捜査側が固執するあまり、それを否定するような消極証拠となる容疑者の証言には耳を傾けようとしなかった結果が9時間もの身体拘束を招いている。