アリバイありも「100%やっている」と9時間拘束…「誤認逮捕」頻発の原因となる捜査方法の問題点とは?
警察はなぜ積極証拠に執着するのか
それにしてもなぜ、警察はそこまで積極証拠に執着するのか。その要因の一つに、逮捕までのプロセスがある。 緊急逮捕や現行犯でなければ、逮捕には令状が必要になる。そのためには、逮捕に相当する証拠をそろえ、裁判官に認めてもらう必要がある。そうやって出してもらった令状が、万一誤認逮捕だった場合、警察組織の大きな汚点になる。 さらにいえば、積極証拠をベースに捜査を進めなければ、すべての前提・シナリオが覆されるという切迫した思いもあるのかもしれない。 「捜査の初期段階では証拠も限られており、『被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由』があれば逮捕状を発付されることになります。そうはいっても間違っていた以上、誤認逮捕の責任は捜査機関と裁判所の双方にあると思います」と西弁護士が証言するように、捜査側に「ミスは許されない」という相当なプレッシャーがあることは想像に難くない。 だからこそ、「逮捕・勾留のような身体拘束はあくまでも例外的に運用されるべき」であり、「供述証拠についてきちんとその裏付けを捜査することや、消極証拠に関する”白の捜査”を行うことが必要だと思います」(西弁護士)というように、固定観念にとらわれず、あくまでもフラットなスタンスで捜査を行うことが誤認逮捕を減らすうえで重要になるだろう。
裁判官も捜査機関も間違うことを前提で逮捕状等の審査をする必要がある
その上で西弁護士は、次のように提言する。 「人を犯人扱いして身体拘束することの責任の重さを十分に理解したうえで逮捕・勾留の運用をしなければならないと思います。また、『人は誰でも間違える』という当然の前提に立たなければなりません。捜査機関も見立てが間違っていないか不断に検証しなければなりませんし、裁判官も捜査機関が間違えているかもしれないという前提で逮捕状等の審査をしなければなりません」 人は間違えるからこそ、一度立てた予測でも、あえて疑ってかかる。取り調べでは、捜査側が自分たちの見立てにそぐわない態度の容疑者に対し、恐喝まがいに追い詰めるケースがいまもあるというが、言語道断だろう。 その結果、容疑者がウソの自白をし、裁判で有罪となり、冤罪が生まれることにもつながる。そう考えれば、その最初の一歩となる逮捕をおいそれとはできないはずだ。