なぜ東京五輪世代の海外移籍が急増しているのか?
1997年1月1日以降に生まれた、現時点で22歳以下となる男子サッカーの東京オリンピック世代で、ヨーロッパへ新天地を求める選手たちが急増している。 このオフはともに22歳のDF中山雄太が柏レイソルからPECズヴォレ(オランダ)へ、DF板倉滉が川崎フロンターレからマンチェスター・シティへそれぞれ完全移籍。イギリスでの労働許可証を取得できない関係で、直後にFCフローニンゲン(オランダ)へ期限付き移籍した板倉はMF堂安律とチームメイトになった。 東京オリンピックに臨む、森保一監督に率いられる日本代表への招集歴はないが、レイソルからは21歳のMF安西海人がSCブラガ(ポルトガル)へ完全移籍。U-18に所属していた期待の18歳、身長193cmの大型GK小久保玲央ブライアンも、ベンフィカ(ポルトガル)へ完全移籍している。 東京オリンピック世代では、ガンバ大阪出身の20歳の堂安に続いて、同じく20歳のDF冨安健洋が昨年1月にアビスパ福岡からシントトロイデンVV(ベルギー)へ移籍。そろってA代表の常連となり、UAE(アラブ首長国連邦)で開催された先のアジアカップでも主軸を担った。 ヨーロッパへの移籍が、にわかに活況を呈している背景には何があるのか。日本サッカー界に生まれた潮流をさかのぼっていくと、2017年5月から6月にかけて韓国で開催されたFIFA・U-20ワールドカップに行き着く。 5大会、実に10年ぶりに出場した若き日本代表はベスト16進出を果たし、決勝トーナメント1回戦では準優勝したベネズエラ代表と延長戦にもつれ込む熱戦を演じている。中山、堂安、冨安は全4試合にフル出場し、大会期間中に左ふくらはぎの肉離れを起こした板倉も主力の一人だった。 3ゴールをあげた堂安が、大会後にフローニンゲンへ期限付き移籍。ルーキーイヤーの終盤には完全移籍へ切り替えたように、FIFA・U-20ワールドカップは「若手の見本市」を長く担ってきた。過去にはディエゴ・マラドーナ、リオネル・メッシ(ともにアルゼンチン)、近年ではポール・ポグバ(フランス)らが名前をとどろかせ、スターへの階段を駆けあがるきっかけをつかんでいる。 Jリーグの原博実副理事長は「そのような世界大会に出場した選手に声がかかる、という流れは実際にあると思う」と語る。 日本がU-20ワールドカップの舞台に戻ってきたことで、堂安に続く形で冨安や中山、板倉もリストに名前が挙がったと見ていいだろう。