なぜ東京五輪世代の海外移籍が急増しているのか?
注目度が高まれば“青田買い”の側面がより強くなり、獲得する対象もさらに若くなる。トップチームに昇格していない小久保のベンフィカ入りがそれに当たり、桐光学園2年のU-17日本代表FWの西川潤は1月中旬から約10日間、ブンデスリーガのレバークーゼンの練習に参加している。将来的なオファーに発展することを含めて、レバークーゼンから打診を受けたものだ。 Jクラブの考え方の変化も見逃せない。前所属チームとしてレイソルが多く出てきているのは、原副理事長によれば「J2へ降格したタイミングで、他のJクラブへ行くよりは海外へ、というのもあると思う」という。先のアジアカップを戦った25歳のFW伊東純也も、大会後にKRCヘンク(ベルギー)へ期限付き移籍している。 J1クラブでは、MF遠藤航(シントトロイデンVV)やMF永木亮太(鹿島アントラーズ)に代表される、主力に育て上げた選手たちを引き抜かれてきた湘南ベルマーレが新機軸を打ち出している。東京オリンピック世代のホープたちをヨーロッパのクラブの練習に参加させて経験を積ませるべく、アカデミーサブダイレクターの関口潔氏が頻繁に渡欧し、さまざまなクラブとコネクションを築いている。 U-19日本代表でキャプテンを務めた経験をもつ、20歳になったばかりのMF齊藤未月は、練習参加の先にこんな青写真を描いている。 「湘南ベルマーレから他のJクラブへ移籍する選択肢はありませんけど、東京オリンピックの前にヨーロッパへ移籍する選択肢は持っていたい」 オファーには発展しなかったものの、すでに2017シーズンのオフにブンデスリーガのマインツ、オランダのユトレヒトの練習に参加。昨夏には高卒ルーキーのMF新井光も、スペインのエイバルの練習に参加している。 今年5月から6月にかけてポーランドで開催される、FIFA・U-20ワールドカップの舞台に日本は2大会連続で立つ。代表メンバー選出が予想される齊藤や、アントラーズの「10番」を託されたFW安部裕葵らが、ヨーロッパクラブの目に留まる可能性も決してゼロではない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)