なぜ東京五輪世代の海外移籍が急増しているのか?
東京オリンピック世代ではないが、2017年8月にFC東京からポルティモネンセSC(ポルトガル)へ移籍した、当時23歳のMF中島翔哉が1年目から大ブレーク。移籍市場で名前が報じられる常連となり、このオフに3500万ユーロ(約43億7500万円)という巨額な違約金でアル・ドゥハイルSC(カタール)へ移籍した。 今冬の移籍市場では動かなかったが、堂安の去就も幾度となく報じられ、アジアカップで活躍した冨安の評価も一気に高まった。 原副理事長が「日本の育成からいい選手が出てきていること」と分析したように、中島や堂安らを介して、日本の若手選手が注目される状況が訪れたことも大きい。 表現は悪くなるが、ポルティモネンセは中島への先行投資に成功し、大きな利益を得た。かつて浦和レッズで活躍し、現在はポルティモネンセのテクニカルディレクターを務めるロブソン・ポンテ氏が頻繁に来日するのも、隠れた逸材やダイヤの原石を探す目的があるからだろう。ポンテ氏の姿は、先の富士ゼロックス・スーパーカップでも見られている。 ヨーロッパのなかでもセカンドグループに属するポルトガルやオランダ、ベルギーなどのクラブをステップにして羽ばたいていく選手は多い。クラブ側も育てた後に高く売れると見込んで、将来性のある若い選手を獲得する。たとえばズヴォレはセンターバックやサイドバックだけでなく、ボランチでもプレーできる左利きの中山を長く追跡してきたと明かしている。原副理事長が言う。 「ポルトガルやオランダ、ベルギーなどは地理的にも同じヨーロッパなので、さまざまなクラブから見てもらえる機会がより増える。選手たちもそれはわかっているし、だからこそ海外へ行くだけでなく、いかに試合に出て成長していけるかどうかが大事になる。Jクラブとしてもいい若手選手を育てて、海外から声がかかり、移籍で得たお金を再び育成へ回すサイクルは決して悪くはないと思う」