<注目>ノルウェーのクロマグロは平均270キロ、巨大マグロが獲れる理由
日本で漁獲されるクロマグロの大物といったらどのくらいの重量のマグロを想像されるでしょうか? 日本では大型クロマグロの分類を30キロ以上としています。100キロもあれば大物と思われるのではないでしょうか。 【画像】<注目>ノルウェーのクロマグロは平均270キロ、巨大マグロが獲れる理由 ところが筆者が9月下旬にノルウェーの水揚げ現場で見てきたマグロは、小さくても168キロ、大きいものは396キロもありました。その時水揚げされた尾数は約160尾で平均は何と271キロ! 日本ではニュースになるような巨大マグロが次々に水揚げされる姿は圧巻でした。 日本が漁獲しているクロマグロとは、次元が違い、あまりの違いに驚かれると思います。これはマグロだけではありませんが、サバをはじめノルウェーとの大きな差なのです。 ノルウェーは大西洋クロマグロですが、太平洋クロマグロのデータを見ると、270キロのマグロは15歳以上と推定できます。 我が国が漁獲している太平洋クロマグロの年齢別漁獲尾数割合でみると、以下は2011~2020年の平均データ(水産庁)となりますが、漁獲尾数では、未成魚の比率が実に93.9%(2歳魚・16キロ以下)以上になります。 漁獲枠の分類は30キロを境に大型魚と小型魚になっていますが、小型魚の大半は30キロ未満どころか5キロにも満たない0~1歳魚が尾数ベースで86%もあります。50%成熟する4歳(約58キロ)以上は3%程度しかありません。大西洋で泳いでいるクロマグロの内容と、資源管理の違いにより大きさが全然違うのです。
ノルウェーはかつてクロマグロ資源をつぶした
筆者が1990年にサバやシシャモの買付で初めてノルウェーを訪問してから30年以上が経過しています。その当時から、そして現在に至るまで何人もの現地の方々から、昔はクロマグロがたくさん獲れたと聞いてきました。 歴史をたどると、ノルウェーは1950年代から60年代にかけ、年間で多い時には1万5000トンものクロマグロを漁獲していました。50年から70年にかけての年間漁獲量の平均は5430トン。ノルウェーには当時7月から10月にかけて4歳から20歳の「親魚」が回遊していました。 資源管理ができていなかった当時は、魚が獲れるのでマグロを狙う漁船が増えていきました。49年に43隻であったマグロ漁船は、50年には200隻にも達しました。 次に獲り放題による世界共通の悲劇が訪れました。漁船と漁業者が増えると漁獲量は一時的に伸びました。しかしこれは魚が増えたからでは決してありません。 60年代の終わりには、ほぼ獲れなくなり、そして85年には乱獲で資源が崩壊し漁獲停止となりました。原因については「乱獲(overfishing)」と言われています。 我が国のように「乱獲」という本質的な原因を避け、「環境の変化」などに責任転嫁するようなことはありません。ですから、資源管理計画がまともなものになって回復したのです。