<注目>ノルウェーのクロマグロは平均270キロ、巨大マグロが獲れる理由
原因はノルウェーだけではなかった
下の図は大西洋クロマグロの分布海域(水色)と産卵場(オレンジ色)を示しています。マグロ資源はメキシコ側と地中海で産卵する資源の2つに分かれていると考えられています。右の地中海で生まれたマグロの内、親魚がエサを求めてノルウェー海域に移動すると捉えられています。 乱獲は、ノルウェー海域だけでなく、産卵場のある地中海でも起こっていました。産卵場、そして産卵を終えて回遊するクロマグロを「数量制限」なしで漁獲を続ければ、資源が崩壊していくのは自明です。
参考までに下の図は太平洋クロマグロの回遊パターンです。クロマグロはかなり広範囲を回遊する魚なのです。
誰が悪いのか?
クロマグロが急激に獲れなくなってしまった当時は次のような話があったかも知れません。地中海沿岸の国々にとっては、産卵後に回遊するクロマグロを獲るノルウェーが悪い、一方でノルウェーからすれば産卵場で獲る地中海の国々が悪いと。 しかしながら、そうやって責任を擦り付けても何も解決しません。マグロが獲れなくなったのは、科学的根拠に基づく数量管理をせずに漁業を続けた、関係国すべての責任なのです。 ノルウェーはこの乱獲での苦い経験を踏まえ、わずかな漁獲枠の配分があってもクロマグロを漁獲しない政策をとってきました。2014年での漁獲枠は30トン。そして資源は徐々に回復し、24年現在の枠は383トンとその10倍になっています。 一方で我が国の報道では、サンマの例を挙げると中国や台湾が悪いと責任転換合戦です。そして国民はそう信じ込まされてしまっているようです。 しかしながら、サンマは科学的根拠に基づく漁獲枠とは到底言えない巨大な枠なのです。年によって漁獲の凸凹はあっても、回復するはずはありません。 サンマでも、サバでもマグロでも資源管理の基本は同じです。それは科学的根拠による管理です。
話の次元の違いに気づいて欲しい
24年7月に釧路で太平洋クロマグロの資源管理に関する国際会議・中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が行われました。国際的な圧力により厳格な資源管理が行われ、徐々にですが資源は回復してきています。 24年11月~12月に開催される同会議で正式に決定される予定ですが、我が国の枠は、25年以降に大型魚(30キロ以上)は1.5倍(約2800トン)、小型魚(30キロ未満)は1.1倍(400トン)にそれぞれ漁獲枠を増やす案で合意されています。 ところで、そもそもノルウェーでは30キロ未満の小さなマグロは漁獲していません。30キロ未満は基本的に漁獲禁止なのです。一方、日本でニュースになるような300キロ前後の巨大クロマグロは、大西洋では東カナダをはじめ普通に獲れるサイズなのです。 その違いは、大きくなる前に獲ってしまうかどうかという「成長乱獲」の有無です。決して大西洋のクロマグロの方が、太平洋より成長が早いといった類の話ではありません。