見守り活動は「地域の文化」 時代に合わせ継続、奈良・小1女児殺害20年
奈良市で平成16年、市立富雄北小学校1年の有山楓(かえで)ちゃん=当時(7)=が誘拐、殺害された事件は17日、発生から20年を迎える。事件後、児童を守ろうと始まった地域や保護者が見守るなかでの集団登下校は、時代の変化に伴い姿を変えながらも続けられている。関係者は見守り活動を「地域の文化」と位置づけ、継続する必要性を強調する。 平日の午前8時前後。奈良市西部にある同小の通学路に地域ボランティアたちが立ち、集団登校する児童たちを注意深く見守る。 見守り活動の中心的役割を果たす富雄地区自主防災防犯協議会会長の上田忠雄さん(79)も通学路に立ち、「ボランティアは地域が約100人、保護者が約100人。これほどの規模で地域の見守り活動をしているのは全国でも珍しい」と胸を張る。 上田さんによると、事件の直後、児童たちが集団で登下校し、地域や保護者が見守る取り組みがスタート。児童らの自宅近くを集合場所の「ターミナル」とし、保護者が当番制で見守るようになっていった。 ■当番制から任意で参加しやすく 一方で、時代の変化に伴い、夫婦共働きの家庭が増えたことで、その当番に参加できない保護者が「協力できず申し訳ない」などと、子供を一人で登下校させるケースが数年前から目立つようになった。 一人で登下校する児童は全体の10~15%ほどで、上田さんは何とかしようと校長や地区の自治連合会会長、保護者らと協議、今年4月から当番制をやめ、保護者が自主的に参加するよう仕組みを変えた。 見守りをしたい保護者は通学路でボランティアとして参加できるようにするなどし、保護者の心理的負担を減らすことで、子供たちを集団登下校に参加させやすい環境をつくった。こうした取り組みの結果、一人での登下校は目に見えて減ったという。 事件当時、富雄北小の教諭だった後藤誠司校長(61)は「『ルールを変えたら手を抜くことにならないか』といった声もあったが、共働きが増えたという時代の変化に合わせないといけない。今回の取り組みは画期的」と称賛する。 地域による子供の見守り活動は、富雄地区から全国に広がり、各地から視察に訪れている。後藤校長は「地域、学校が一つになっている。こんなところはそうない」と自信を見せる。