金沢中心部にイノシシ 駅近くで車と接触、目撃続々
冷たい雨が降るまだ暗い県都金沢の玄関口周辺をイノシシが迷走した。8日午前3時半ごろ、金沢市本町1丁目の県道で、体長約1メートルのイノシシ1頭が車と接触した。現場は金沢駅まで約400メートルで、明け方にかけて同じ個体とみられるイノシシの目撃情報が市中心部で相次いで寄せられた。専門家は餌を探して都市部に迷い込んだ個体とみられるとし、生ごみを外に放置しないなど刺激せずに対応するよう注意を促した。 金沢東署によると、イノシシは本町1丁目の県道を走行中の車に接触、衝撃でバンパーは破損したという。その後、午前4時41分に彦三町2丁目、6時31分に下堤町、直後に上堤町交差点付近と市中心部でその姿が確認された。署員や市職員が周辺を巡回したものの、9日時点で見つかっていない。 金沢駅近くで出没が目撃されるのは珍しく、本町に住む80代女性は「70年近く暮らしてきたが、イノシシが出たのは初めて」と驚いた。 市農業水産振興課によると、成獣となったイノシシが単独行動していたとみられる。担当者は「近くに餌場となる山もなく、どこに行ったかは全然分からない」と困惑した様子だった。 市中心部では10月19日、幸町の犀川・桜橋近くの河川敷で体長約1メートルのイノシシが目撃されている。 ●野々市でも目撃 8日未明には、野々市市中心部でもイノシシ1頭が目撃された。けが人はおらず、市が防災メールで注意を呼び掛けた。 市によると、午前0時半ごろ、通行人が三納3丁目の三納交差点で目撃し、同1時ごろに1・5キロほど離れた本町1丁目でも目撃された。市は同じ個体とみている。 ●浅野川沿いを移動か 県立大・大井徹特任教授 野生動物の生態に詳しい石川県立大の大井徹特任教授は金沢駅近くに出没した個体について「卯辰山方面から浅野川沿いを移動してきたか、小立野台地の緑地から金沢城公園に抜けて来た可能性がある」と指摘。森の周囲で餌を探していたところ、例えば車や散歩中の犬に驚き、森の外に出てきたことが想定されるとした。 大井特任教授によると、イノシシの交尾期は11月中旬から2月ごろまでで「雄であれば雌を求めてウロウロしていたのかもしれない」とした。市街地にも畑でダイコンやネギが育てられており、柿の木などもイノシシを引き寄せるという。 金沢のまちなかは飲食店が多く、生ごみなどをあさるうちに都市部に入り込んだケースも考えられ、「イノシシを近づけないためには生ごみを外に放置しないことが大事だ」と強調した。 近年、イノシシは個体数が増加し、それに伴って生息域も拡大、市街地周辺の森に潜む個体も多くなっているという。大井特任教授は「驚かせると攻撃してくるかもしれない。見掛けても大声を出さず、建物の中に入って役場や警察に通報してほしい」とした。