「てっぺん」目指したチームが残留争い…今季16位に終わったアルビレックス新潟、いくつかの“誤算”
アルビレックス新潟は「てっぺん」を目標に掲げたシーズンだった。復帰後のJ1で1シーズンを戦い抜いた経験とJ2時代から取り組んだスタイルの土台もあった。キャンプの時点ではコンディションの良さを口にする選手も多く、開幕後は第1節鳥栖戦とホーム開幕戦の第3節名古屋戦に勝利。2勝1敗とまずますの滑り出しを見せた。しかし、その後はいくつかの“誤算”もあり、勝ちきれない試合が続くことになってしまう。 順位や勝ち点の推移、今季のデータはこちらから ◆シーズン序盤で副主将が移籍 開幕して4節を終えた後で、DF新井直人の電撃移籍が発表された。副主将という立場だけでなく、両サイドバックをこなせるユーティリティープレーヤーの移籍は、チームにとっては確実にマイナスだった。松橋力蔵監督はいつも通り「今いる選手で十分戦える」としたが、新加入の大卒サイドバック森璃太はけがもあり、力を発揮できないままJ3福島に期限付き移籍。サイドバックの手薄さは、少なくとも夏にDF橋本健人を獲得するまで課題だった。 ◆補強選手ら、けが相次ぐ 第3節ホーム開幕の名古屋戦。補強の目玉、得点力を期待されたFW小野裕二が初先発した。しっかり前線でボールを収め、好機を演出。中盤ではMF宮本英治が攻守に奮闘し、最後はMF長谷川元希が決勝点を決めた。新加入3選手の躍動が勝利をたぐり寄せた。ただ、こうした試合が何度も続くことはなかった。 特に前半戦、小野はコンディションの影響で出場できず、長谷川元希は甲府在籍時のような存在感をなかなか発揮できなかった。宮本はMF高宇洋が移籍したボランチのポジションで活躍したが、第11節の広島戦で負傷、眼窩底骨折で離脱となった。また、CB渡邊泰基の穴を埋めることが期待され、期限付き移籍から復帰したDF遠藤凌も、リーグ戦は7試合の出場にとどまった。 ◆若手の台頭 そんな事情もあり、昨季からの上積みは見えにくかった。ただ、若手たちのプレーがチームを支えた。第14節横浜M戦で先発に抜擢された大卒新人のMF奥村仁は、果敢な仕掛けで攻撃を活性化させ、初ゴールも奪った。特別指定の大学生DF稲村隼翔も出場機会を得て、守備の安定感と左足から長短のパスセンスを見せた。特にYBCルヴァン・カップではチームを決勝に導く活躍ぶりで、来季の正式加入前にもかかわらず、サポーターからの信頼を得ている。 ◆個の成長も見えたが… 攻撃はFW谷口海斗が引っ張った。チームトップの10得点。MF秋山裕紀はパスワークの軸に成長した。守備はDF舞行龍ジェームズらが体を張ってこらえた。昨季途中加入で1ゴールに終わったFW長倉幹樹も、ルヴァン杯とリーグ戦合計で2桁得点という結果で示せるようになった。右サイドバック藤原奏哉の攻撃力も、進化が見えたポイントだ。今季5得点。チーム最多37試合出場で、藤原のポジションが固定できたことは、チームにとってどれだけ助けになっただろうか。 ただ、なかなかチームの成績は安定せず、連勝は8月の第26、27節までできなかった。 ◆混戦の中から崩れ落ちた4連敗 勝ち点などを見て分かるように 、今季のJ1は混戦だった。8月に初めて連勝ができた時点、新潟も1桁順位や上位まで狙える可能性は十分にあった。しかし、痛恨だったのは9月の第29節名古屋戦(日程変更)からの4連敗だ。4試合で15失点と守備が崩壊した。「強みのハイプレスの目線が合わなくなった」(松橋監督)。ルヴァン杯では決勝までたどり着いたが、その分、リーグ戦での結果の差が苦しかったという。守備をミドルで構える方向へ修正したが、攻撃まではかみ合わず、9戦勝利なしでシーズンが終わった。堅い守備を構築して9戦負けなしのままシーズンを終えた昨季とは対照的だった。