ゆがめられる民意…台湾狙う“世論工作”のリアル 中国「統一戦略」の実態は
2024年、台湾の次のリーダーを選ぶ総統選挙が行われる。中国は台湾との統一を掲げ、軍事的な圧力だけでなく、“世論工作”も仕掛けているとされる。台湾の若者をターゲットにした「格安ツアー」など、その手口はさまざまだ。習近平政権の「統一戦略」と“本気度”を探った。 (NNN上海支局 渡辺容代)
■台湾の若者誘う中国への“格安ツアー” 「セルフメディア」を対象に…
中国政府系メディアのニュースで、声高に主張する男性。 「台湾では想像できない生活だ。誤りばかりの情報を見なくていい。彼らは知るだろう、民進党が台湾の若者たちの中国訪問を恐れている訳を!」 この男性は、中国・広東省で行われた“あるツアー”の主催者側の1人だ。 23年12月、中国・広東省の海沿いの街・珠海を5泊6日で巡るツアーが開催された。参加したのは主に20~30代の台湾の若者たち。このツアーは、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の地方組織が主催したものだ。 料金は、航空券代込みで約6万7000円で、相場とされる13~4万円の半額ほど。さらに今回のツアーは、個人で文章や動画を発信する「セルフメディア」で活動する若者が対象となっていた。 参加者に話を聞くと、ツアー中のイベントには地元政府の幹部が出席して珠海の魅力を語ったほか、中国の携帯電話回線の契約や銀行口座を作る時間まであったという。 台北市から参加した30代の男性は「主催者側の狙いは、地域の発展を私たちに発信させることだ」と冷静に話した。自分で撮影した動画などを配信するかどうかは決めていないという。 一方、これまでも同様のツアーに参加してきたという女性は「毎回、中国の文化や経済発展を紹介してくれる。台湾人にとって本当に視野が広がる」と声を弾ませた。 若者を対象としたこうしたツアーは、中国による「世論工作」だとされている。2010年代に台湾が中国寄りの国民党政権だった頃から行われてきたという。次世代を担う若者達の間で、中国に対し好意的なイメージを根付かせる狙いがあるとみられている。