【解説】どうなる石破外交?米国・中国・韓国…3つの視点でひもとく2025年の展望
■中国は日中関係の改善に思惑含み?――石破首相は“積極的な対話”方針
もう1つの大国、中国はどうだろうか。石破首相は、2024年10月のASEAN首脳会議で中国の李強首相と、11月のG20首脳会議では習近平国家主席と会談。ある外務省幹部は「日中間はテンポよく対話ができている」と胸を張る。 また、2024年後半には日本産水産物の禁輸措置の緩和に向けた合意や、日本人の短期滞在ビザ免除など、関係改善の兆しも見られた。「中国側の『日本との関係をある程度、元に戻そう』という意識の現れではないか」(外務省幹部)。 中国はなぜ、このタイミングで対日姿勢を修正しているのだろうか。別の外務省関係者は、“中国経済の低迷”が背景にあると分析する。「いま、中国はトランプ次期政権とどう対峙するかで頭がいっぱい。経済が低迷するなか、関税の引き上げは死活問題になるからだ」(外務省関係者)。“貿易戦争”を引き起こしかねない強気の通商政策のみならず、対中強硬派の要職への起用を次々に打ち出すトランプ氏。米中対立が先鋭化するリスクが高まるなか、中国には日本との関係を改善したい思惑があるとみられる。 一方で、外交関係者に“あるデータ”が衝撃を与えた。2024年12月に「言論NPO」などが発表した世論調査によると、中国側で「日本に対して良くない印象を持っている」と答えた人は、去年と比べて24.8ポイント増で87.7%にのぼった。「ここまで対日感情が悪化しているとは衝撃的だ」(外務省関係者)。急速に悪化した理由について、この関係者は「中国政府が煽っている部分もある。暴走したSNSを取り締まることもしない」とため息をつく。 石破首相は周辺に「お互いに譲れないものは譲らないが、助け合える部分は助けていく。それが外交だ。政治家同士が真剣に考えることが重要だ」と語っていて、積極的に対話を重ねることで懸案事項の解決を目指す考えだ。ただ、対中強硬論を深めるアメリカに配慮する必要もあり、ふたつの大国に向き合うバランス外交が求められている。