なぜハンズマンは、「経営効率」を度外視しても、潰れないのか――ジワジワとお客さんが増えているワケ
本記事では長期投資家として有名な澤上篤人氏が思わず応援したくなった「面白い会社」について、四季報読破の達人・渡部清二との対談形式で紹介します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
76歳、投資キャリア約50年の澤上氏が投資する企業の特徴
澤上 もう数え切れないぐらい思い入れのある会社は、ある。笑っちゃうのもあって、その典型は株式会社ハンズマン。このお店は九州だけなの。最近ようやく大阪にお店出したけど。 渡部 宮崎でしたっけ? 澤上 そう。上場したての頃、親父さんと息子さんが会社に来た。今は息子が社長をやっているけれど。それでいろいろと話をしてくれる。それを聞くと、この会社はかなり本気でやっているなと。どうしてかというと、ユーザーにとって、本当になくてはならない会社なの。 普通はビスとか釘とか、袋に12本とか20本入っているでしょう? ところが実際は、1本か2本しか必要がないわけ。残ったものは余分になってしまう。だから、ハンズマンは釘1本から売るわけ。 普通はこういったDIY(専門業者でない人が、何かを自分でつくったり修繕したりすること)の小売店は、お店に並ぶ商品点数が10万点ぐらいなのね。ハンズマンはそんな体制だから、30万点を軽く超えているわけ。超効率の悪い商売になっている。 また欠品がある場合には、あちこちに吊るしてあるわら半紙に、お客さんがリクエストを書いておくと、翌日には仕入れてくれる仕組みになっている。 何もかもが、お店には大変だけれども、お客さんのためを考えてという仕組みになっている。金融とはえらい違い。 渡部 そうですね(笑)。
どこまでも「お客さんファースト」なお店
澤上 朝の7時から9時近くまでは、お客さんはプロの人。9時半からは一般のお客さんが来店する。プロ用から一般用まで、全部揃えているわけね。 面白いのは、電動工具って普通のお店ではお客さんは店員から説明を聞くだけで買う。ところがハンズマンでは、広い場所があって、そこに全部の工具が置いてあり、店員が使い方を教えてくれて、お客さんは使ってみる。それで、自分にとって一番使い勝手のいい電動工具を買うことができる。 商売という観点からは、どう見ても無駄ばっかりやっているけれど、お客さんにとっては素晴らしいお店なわけ。 渡部 なるほど。