大河ドラマ「べらぼう」江戸の出版王を演じる横浜流星が王の称号を得るとしたら…?
――今回、1年という長い期間一人の役を演じるということで、大変だと思いますが役作りはどのようにされていますか? 「1年間、作品と蔦重と向き合うことができるのは役者として、とてもぜいたくで幸せなこと。作品を作る上で、時間が足りないなと思うことも多いので。2014年の『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日系)で1年半ぐらい同じ作品の撮影をして、芝居の楽しさを知り、『この世界で生きていこう』と決めたので、10年たった今、また同じように長丁場の作品ができることになって運命を感じています。役作りにおいては、題材となる作品を見たり、実際に生まれ育った場所に行って空気を感じたり、資料を見たり、専門家の先生に会って話を聞いたり…。あと、阿部寛さんが映画『HOKUSAI』で蔦重を演じられていたのでお話を聞いたり…。全て大事にしつつ取り入れて。ただ、一番は森下先生の作った世界で蔦重として生きることを大事にしながら、自分にしかできない蔦重を生きられたらと。所作や言葉遣いも難しいですが、僕は江戸時代に生きていないし、監修をしてくださっている先生も見てはいないので、形だけにとらわれずに自由に蔦重として生きようと思います」 ――ここまで演じてきて何か収穫はありましたか? 「収穫…。波瀾(はらん)万丈過ぎて心も体も疲れて、それどころじゃないというか(笑)。とにかく、1年間やりきる体力つけなきゃいけないなと!」
――今回の舞台となる江戸という時代の魅力についてどう思いますか? 「僕も江戸を生きてみたいなと思いました。不自由ではあるけれども、今のように情報が錯綜(さくそう)していないし、自由はないけど自分を持っていて、人々の交流を大切にしているのがいい時代だなと思います。今は、情報が多い中で、自分を持てずに流されてしまうような人が多いと思うんですけど、江戸の彼らにはそういう部分はなくて、強い意志を持っていて。戦もないので、蔦重としても、すごくいい時代かなと思うし、今とそう遠く離れていないので、視聴者の方にも近くに感じられるような世界観になっていると思います」 ――田沼意次を演じる大先輩の渡辺さんから学んでいることはありますか? 「謙さんは、『国宝』(2025年公開の映画)で、僕の父親役としてご一緒して。その時に食事に行っていろいろとお話をさせてもらって。『ちょうど流星くんと同じ年頃に俺も大河の主演をやった』とおっしゃっていて。『とにかく真っすぐ全力でやればいい』という力強い言葉を頂いたので、そのことを信じてやっています。現場でも謙さんのたたずまいなど学ぶことは多いので、あまり共演シーンはないのですが、一緒の時間は大切にしています」 ――忘八(女郎屋の主人)の親父さんたちは、すごく個性的でユニークですよね。親父さんたちとの掛け合いはいかがですか? 「自分が最初に想像していたイメージと違って、厳しさの中に優しさがあるんです。もちろん、圧もあるんですけど、忘八の親父さんたち心の中に優しさや愛があるから、蔦重も自由にいろいろ言えるのかなと。脚本から想像していたのと実際現場でやってみて違っていたのが、作品作りの醍醐味(だいごみ)だなと感じて楽しいです」