「テレビの見過ぎ」が寿命を短くする理由は? 新研究で判明した、健康への影響&対策を米医師がレクチャー
のんびりとドラマやバラエティー番組を楽しんだり、休日に映画を見ながらリラックスするのは至福の時間ともいえるが、テレビ視聴時間を運動に替えることができれば、エイジングにはずっといい影響を呼び起こすだろう。それが、テレビ視聴時間と健康的なエンジングの関係性を調べてわかった重要な結論だ。 【写真】40代が老化の分かれ道!脳も体も80代まで元気でいるために、知っておきたい骨と筋肉のケア習慣 米国医師会による総合医学ジャーナル「JAMA Network Open」に掲載された最新の研究によると、1992年に米研究チームがとある健康調査をスタート。50歳以上の男女約4万5000人を対象に、その後20年間にわたって健康状態を追跡した。そこから、日々のライフスタイルと各々の健康がどう関わっているのかを分析。研究対象者のテレビ視聴時間や、職業、職場や自宅でどのくらいの時間動いているか、座っているかなどを調査し、最終的にそれぞれがどのくらい"健康的に年齢を重ねたか"どうかと照らし合わせた。 研究チームが定義する健康的なエイジングとは、最低でも70歳まで寿命が続き、なおかつ大きな慢性病がないこと、記憶に問題がなく肉体的精神的にも健康であることなど、少なくとも4つのカテゴリーで判断した上で定義される。 その大規模な研究の結果、あることが判明した。研究に参加した人たちは、2時間テレビを視聴するごとに健康的に年齢を重ねる確率が12%低下したのだ。しかし、職場で軽い運動を2時間加えることで、健康的に年齢を重ねる確率が6%上昇する可能性があることもわかった。座ったりテレビを見たりする1時間を、軽い運動に替えた人の場合も健康的に年齢を重ねる可能性がより高く結果に反映された。 では、どうしてそうなるのか。また、どのような予防策があるのかを専門家に聞いた。
なぜテレビ視聴が、健康的な将来を阻害する?
結局は座っていることが問題。二時間立ちっぱなしで映画を観るという人は非常に稀で、そんな人はほとんどいない。多くの人は座ってじっくりとテレビを視聴するだろう。今回の研究は現代人には切っても切れないその"座り続ける"という習慣に特に着目した研究だ。座っていることは健康レベルの低下や早死の原因になると、これまでも繰り返し言われてきた。 2017年に米国内科学会が発行した学術誌『Annals of Internal Medicine』に掲載された研究では、腰に加速度計をつけて座っている時間を計測したところ、日常のほとんどの時間を座って過ごしている人は何らかの原因で早死にするリスクが最も高いことを発見。アメリカ心臓協会(AHA)の科学顧問も、たとえ日常的に運動している人でも座っている時間が長いと心臓病や脳卒中のリスクが増す可能性があると警告している。 AHAによると、アメリカ人の成人は1日に平均6~8時間座って過ごしているという。 「座って過ごす時間が長いほど、不健康な結果になるというエビデンスがたくさんあります」と、ニューヨーク州立大学バッファロー校運動及び栄養科学部のキャセリン・N・バラントキン准教授は言う。 テレビを見ている時の私たちは、ただじっと座っているだけ。それが活動的に過ごせる可能性のある時間と置き換わってしまっていると彼女。 「テレビを見る時間が長い人は、不健康な食生活や、高カロリーの食事摂取、運動不足や睡眠不足など、病気のリスクを高める原因になる行動パターンが他にもいくつかみられる傾向があります」と、高齢者の認知機能分野に詳しいスコット・カイザー医師(公認老人病専門医でカリフォルニア州サンタモニカにあるクリニック、パシフィック・ニューロサイエンス・インスティチュート所属)は注意を促す。 長時間座っていると、血栓ができるリスクも高まると、オハイオ州立大学ウェクスナーメディカルセンターの家庭医学専門医バーバラ・バウワー医師も明かす。「座っていると脚が鬱血して、むくみも起こり痛みの原因になったり、そのうち皮膚が破れて感染症の原因にもなります」とのこと。 座っているだけではなく、「座りながら"何をしているか"が大事」と、バラントキン医師。「テレビやスマホ画面を見ながら何かを食べると、脳が満腹感に注意を払わなくなるので、食べる量が増えるというエビデンスがあります。また、リアルタイムでテレビを見ているときは、色々と美味しそうなコマーシャルを目にしますよね。それらは決して、どれもこれも体にいいものばかりというわけではありません。それらを見たことによって、また食欲を刺激し暴飲暴食へ繋がるケースもあります」と言う。