ヒップホップ誕生から50年。ハイファッションとストリートの蜜月関係を深掘り
女性ラッパーは“良い子”じゃなきゃダメ?
『Fashion Killa』におけるもう 1 つの主要な筋書きは、ファッションを前進させるために貢献した女性ラッパーたちの物語だ。初期には多くの女性アーティストがゆったりした服を着て、同時代の男性のスタイルをまねていた。リル・キムがよりセクシーなスタイルを大衆にもたらしたとき、「保護者団体から昼間のテレビの司会者、さらには女性ファンまでが『私たちはあなたのやっていること、売っているものが気に入らない。あなたの品位を下げていると感じるし、私たちの品位も下げている』と彼女に反発した」という。
こうした会話は現在も引き継がれており、カーディ・Bやミーガン・ザ・スタリオンなど女性アーティストの服装について、人々は絶え間なく意見している。「女性アーティストは常に葛藤を強いられている。何を着て、何を着ない、といったことをどれくらい重要視すべきか。肌の露出はどれくらいが適当か。それは、知的で有能でリリックに優れたラッパーとしての存在価値を何らかの形で損なうものかどうか」。「知的で尊敬されるプロになるために、ビキニを着たかどうかなんて関係ない世界に住みたい」とクリシュミナティはつぶやく。
「史上最高のラッパーについて人々が語るとき、女性はそのリストに名を連ねることさえまれだったりする。そして、そういった話題では大体においてローリン・ヒルの名前が挙げられる。もちろん彼女が美しくて才能があるからだが、理由はそれだけではない。彼女は布で覆われていて、それが人々に安心感を与え、“良い子”の印象を与えたからだ。ヒップホップの初期から男性は過度に性的で、過度にマスキュリンだったことを考えると、これは残念だと思う。彼らは舞台裏で『あなたは良い父親ですか?』『あなたは良いロールモデルですか?』と問い詰められることはない」 今日最も成功している女性ラッパーたちは、そういった批判を振り切っている。彼女たちは自分自身に忠実だ。たとえ相手が機嫌を損ねたとしても、彼女たちはこう言うだけだろう。「勝手にすれば?」 Translation & Text : Naoko Ogata