ヒップホップ誕生から50年。ハイファッションとストリートの蜜月関係を深掘り
ラップ好きは“ポロ派”か“トミー ヒルフィガー派”
ブルックリンの若者グループ「ローライフ(LO LIFE)」の物語について、クリシュナムルティは「ポロ ラルフ ローレン」とヒップホップの蜜月関係を明らかにしていく。彼らはそのブランド品を店から“万引き”し、その後最も熱烈なファンとなり、ポロをまとって街に出て、ブランドを宣伝して歩いた(彼らは文字通り歩く広告塔であり、従来の広告よりも多くの人々へと働きかけた)。
さらに彼女はスヌープ・ドッグやアリーヤといったミュージシャンが「トミー ヒルフィガー」の普及にどのように貢献したかについても注目した。当時、両ブランドへのラップ音楽ファンたちの熱の入れようは相当なものだったという。「彼らはポロ派? トミー派? それとも両方?といった具合で競い合っていた」
アリーヤの「トミー ヒルフィガー」の広告撮影ではメンズコレクションのアイテムが丈をカットして転用され、男性用アンダーウェアはバンドゥへと姿を変えた。この試みについてクリシュナムルティは、「コラボレーションに前向きで、アーティストが独自のアレンジを加えるのを許したのは本当に賢明だった」と分析する。
ファレル×「ルイ・ヴィトン」はヒップホップ史が一周した瞬間
ラッパーたちはしばらくすると、自身のファッションブランドを始めるようになる。「起業家精神を持った人たち、パフィーやデイム・ダッシュのような人たちが到来した。彼らは『自分たちの名前がちまたで話題になっているのに、なぜ他人のブランドを支持する? 物事を動かしているのは自分たちだ』と言わんばかりだった」
ファレル・ウィリアムスによる「ルイ・ヴィトン」メンズのデビューショーは、ビヨンセやジェイ・Z、ミーガン・ザ・スタリオンらがフロントロウを席巻し、正真正銘のポップカルチャーイベントとなった。数カ月前に起こったこの出来事について、クリシュナムルティは「物事が一周した瞬間だった」と回想する。「以前ならダッパー・ダンがそのロゴを使って、ヒップホップの聴衆向きなものを自分で作らなければならなかった。だけど、この高貴な部屋の中には今、彼が座っている。ファレルは心から歓迎され、彼のアイデアはどんどん実行されていく......ファレルは私の本に最高の締めくくりを与えてくれたと言いたい」