ヒップホップ誕生から50年。ハイファッションとストリートの蜜月関係を深掘り
ロゴ入りファッションがいかにラグジュアリーブランドの評価を得たか?
この本のためにクリシュナムルティは、ナズやエイサップ・ファーグ、ミーク・ミルといったラッパーたち、さらにはダッパー・ダンやトミー・ヒルフィガーなどのデザイナーにインタビューを行った。中でも、ヴァーサスTVのパフォーマンス直前のキャムロンとのおしゃべりや、ワードローブが多すぎるから服をたくさん手放したというプシャ・Tとの対話など(彼女は「自分が引き取るから、どこのグッドウィル(アメリカで人気のリサイクルショップ)か教えて」と懇願したという)、Zoomの画面越しではない直接の出会いは彼女にとって楽しい経験だったようだ。
これら直接の証言を通じて、『Fashion Killa』ではヒップホップ・スタイルが半世紀にわたってどのように進化したのかをたどる。それはLL・クール・Jやビッグ・ダディ・ケインがダッパー・ダンの“ノックアップ”を誇示してラグジュアリーブランドと張り合い、次にそれらブランドのインスピレーションとなり、 彼ら自身がデザイナーになり、最後は自らの言葉でラグジュアリーを定義するまでに至る、大きな物語だ。
その過程で彼女は'80~'90年代にラッパーと協働したカール・カナイやエイプリル・ウォーカーのようなデザイナーについて語っている。「当時、彼らは主に“アーバンデザイナー”と呼ばれてひどく軽視されていた。この言い方は本質的に主要な購買層が白人ではないことを示す方法だった」と彼女は述べる。
だけど、彼らは成功したストリートウェアブランドになった。なぜならエイプリルがビギー・スモールズやトゥーパックと関係を持ったり、カールがトゥーパックやパフィを初期のブランドアンバサダーとして起用したり、彼らは未来のファッションアイコンたちと仕事をすることができたから」
今日、多くのブランドがロゴ入りパーカーやデニムスーツなどのアイテムで、ストリートブランドがやったことを「本質的に模倣」している。「何十年もたった今、これらのブランドが適切に認められ、評価されるようになったのは素晴らしい。なぜなら彼らなしでは『ショーン ジョン』も『ロカウェア』も『ベビー ファット』も存在していないから」とクリシュナムルティは述べる。