ヒップホップ誕生から50年。ハイファッションとストリートの蜜月関係を深掘り
ヒップホップはファッションをいかに変容させたのか。ラグジュアリーブランドのロゴトレンドから、ファレル・ウィリアムスの「ルイ・ヴィトン」デビューショーまで50年の歴史についてひも解く。US版『ELLE』より。 【写真】完全保存版! 写真で辿るおしゃれデニムの歴史
1973年8月11日、DJクール・ハークがNYブロンクスのダンスフロアで、2台のターンテーブルをつないでレコードをかけた瞬間に始まったヒップホップ。 ヒップホップの誕生から50周年を数えた2023年の夏、ソウミャ・クリシュナムルティは他の多くのファンと同じようにヤンキースタジアムへ巡礼し、スリック・リックやビッグ・ダディ・ケインなどのアーティストが花を手にして表彰される姿を見守った。しかし、長年音楽ジャーナリストとして業界に身を置き、新刊『Fashion Killa: How Hip-Hop Revolutionized High Fashion(ファッション・キラ: ヒップホップはいかにしてハイファッションに革命を起こしたか)』を著した彼女にとって、その祝典はどこかズレを感じるものだった。
クリシュナムルティは、ヒップホップ生誕50周年を祝う記念式典とそれに伴ったメディアのプロモーションは、「昔ながらのものに重点が置かれ、特にラグジュアリーファッションと関連した美学やスタイルについてはあまり重視されていなかった」と振り返る。彼女は自著を通じ、「アディダス」のトラックスーツを着たRun-D.M.C.のような一般に流布されたイメージを超えて、ヒップホップがファッションに与えた影響と相互作用について理解が広がることを望んでいる。
'90年代にミシガン州カラマズーで育ったクリシュナムルティは当時、海岸沿いで発展していたヒップホップシーンから自分は少し疎外されていると感じていた。それでも放課後はMTVとBETにくぎ付けになり、リル・キムの「Crush on You」のMVを繰り返し見て、音楽シーンやファッションを必死に追っていたという。「ウィッグもファーもメイクも、何もかもが遊び心満点で楽しくて派手だった」。彼女は興奮した様子で続ける。「何カ月もの間、それらの画像を繰り返し見続けて、私たちはほとんど自己洗脳に近い状態でそのスタイルに完全に浸っていた」