40代、50代の気持ちがラクになる「幸福学」講座/老後のために2,000万円貯まっていない私は、不幸になるの?
「地位財」から「非地位財」の生き方へ
――比較は不幸の元ですね。「あの人はあんなにお金持ちなのに、私はない」となってしまいますもんね。 ファイナンシャルウェルビーイングという観点から、外資系証券会社のプライベートバンカーとしてコーチングをされている方のお話を聞いたところ、預貯金がそう多くなくても楽観的な人は幸福度が高くて、億単位の預貯金があっても不安な人は、常にお金が足りないと悩んでいるそうです。 中には100億の資産を持っていたけれど、リーマン・ショックで60億円失ってしまったときに、「自分は日本一不幸だ」と嘆いていた方もいらっしゃるとか。あと40億円も持っているのに…。我々のような庶民感覚ではお金持ち=幸せと思いがちですが、額はどうあれ、人はみんな自分が中心ですからね。お金が減ることについては、大金持ちでも同じような不安感を持っているわけです。
――そうなんでしょうね。うーん、でも先生、40億も持っているのに不幸、という人とは、そもそも比較する気が起きないです(笑)。極端ではないところで、比較せずにすむ考え方も教えてもらえませんか? ははは。そうおっしゃると思いました。では、この図を見てください。「地位財」「非地位財」という、経済学者のロバート・フランクが作った言葉があるのですが、これについてイギリスの心理学者ダニエル・ネトルが行ったユニークな分析を図にしたものです。 ――わかりやすいですね。つまりお金は地位財になるので、幸福の持続性が非地位財よりも低い。だから、つい足りないと思って追いかけてしまう! そのとおりです。そして地位財は、所得・社会的地位・物的財とあるように、周囲と比較できてしまうものなんですよね。一方の非地位財は、目に見えないし、他人との比較も関係なく幸福感が得られるものです。しかし、悲しいかな人間はつい、目に見えてわかりやすい地位財を追いかけがちと、先のダニエル・ネトル博士は言っているわけですね。