白井元調教師と学ぶ血統学【159】サンデーサイレンス編もついに最終回 「どの馬よりも重要な存在」
【白井元調教師と学ぶ血統学「温故知新」】 元JRA調教師の白井寿昭氏に指南役をお願いし、様々な角度から血統を考える連載の第159回。長きにわたるサンデーサイレンス編もついに最終回。多くの名馬を輩出したサンデーサイレンスの総まとめを白井氏とともにしていきたい(※特別無料公開)。 進行は東スポ競馬・関西地区本紙担当であり、白井氏との親交も深い松浪大樹記者。今回も興味の尽きない血統論を堪能していただきたい。
サンデーサイレンス編も最終回
松浪大樹(東京スポーツ記者=以下、松浪)サンデーサイレンス編の最終回です。初回(【67】)が2023年の2月2日に公開ですから、約1年9か月の長い期間を費やしてきたんですね(笑い)。 白井寿昭氏(元JRA調教師=以下、白井)なんとか無事にやってこれてホッとしてる。途中で何度かの脱線もあったけどな(笑い)。 松浪 最後のまとめをしましょう。初年度からGⅠ馬を出したサンデーサイレンス。新しい時代の到来をすぐに感じました。 白井 序盤の産駒ではダンスインザダークの馬体が一番良かったと思うな。ダンスパートナーの血統で。あれと違って、ダンスインザダークはホンマに馬が良かったわ。 松浪 確かに。ホレボレする立ち姿でしたね。 白井 その次の世代になると僕が管理したスペシャルウィーク。マンハッタンカフェはサンデーにそっくりで。これも良かったな。 松浪 ダイワメジャーみたいにサンデーサイレンスに似ていない馬でも走りました。 白井 見た目は似てなかった。これはマイラーやな。そういう体。でも、歩いているところを見たらな。サンデーらしい柔らかさがあって。 松浪 そうでした。そこにサンデーサイレンスの影響を感じましたね。
「ここまでとは思わなかった」
白井 で、晩年にはディープインパクト。 松浪 その馬は傑出し過ぎていますけど、それ以外の馬というか、重賞を勝った馬の数が晩年はどんどんと増えていって…。これ、重賞馬も含めたリストなんですけど、驚くほどの数ですよね。 白井 ホンマや。飽和状態。 松浪 サンデーサイレンス産駒というだけでは種牡馬になれない。そんな時代が来てしまうんですよ。重賞を勝っているのに乗馬とか。 白井 ホンマにすごい種牡馬になったなあ。それが改めてわかるわ。1頭、2頭の突出した馬を出すのではなくてさ。もちろん、そういう馬も出しているんやけど、こうやって数を出すやん。それも平均以上の。 松浪 はい。ホームランも打つけど、そもそものアベレージが高い。生産者に信頼された理由ですね。 白井 何度も言うけど、こういう馬の現役時代を見ることができて。ホンマに財産。 松浪 種牡馬デビューの前から「これは間違いない、走る」と言っていた先生でも、ここまでの活躍をするとは予想はできなかった。これで正解ですか? 白井 ここまでとは思わへん。予想以上。サンデーはさ。何をおいてもしなやかさ。これが特徴やった。柔らかくて、サーッと動いていくねん。見たことがないと思った。 松浪 柔らかいほうが故障しないし、硬い馬のほうが怖い。そこもいい部分ですね。 白井 それでね、なによりも我が強い。それが子供にも遺伝しているというか、遺伝させているというか。 松浪 わかります。影響力の強さ。 白井 そうそう。結局のところ、種牡馬はそこが大事やから。自分の血を絶対に残したろ! こんな感じに思ってるかは知らんけど、それを見てて感じるわけ。 松浪 早い段階で種牡馬入りしたフジキセキ、アグネスタキオンなども活躍馬をバンバンと出している状況で、それでもこれだけの重賞勝ち馬を出す。すごいですよね。 白井 サンデーの系統だけでどれだけのレースを勝ったんやろうか(苦笑)。すごいな。最初の世代のプライムステージ。これは伊藤雄二さんのところやね。スピードがあった。 松浪 サイレントハンターはスペシャルウィークと同じ臼田オーナーの馬。スペシャルウィークが勝った天皇賞(秋)にも出走していました。 白井 オレンジピール。これも山ちゃん(山内研二元調教師)のとこの馬やな。 松浪 で、フサイチエアデール。このラスティックベルの系統は伸びましたね。フサイチエアデールの全妹インディスユニゾン。あの馬の孫がノームコア、クロノジェネシスですから。 白井 いろんなレースを勝って。幅広いな。掛け合わせにゆとりがあったからと思う。 松浪 早熟な馬もいますし、古馬になってからの晩成タイプも。 白井 それもさっき言った掛け合わせの幅広さ。これが理由やろうな。