月の裏側に五星紅旗を立てた中国、専門家が示唆する月面探査で狙うある「利権」
中国ではこのところ、何かと暗いニュースが多い。上海総合指数(株価)が3000ポイントを再び切ったとか、不動産最大手の「万科」が深圳の新本社予定地の土地を22億元(約480億円)で売却したとか、大雨の影響で江西省・湖北省・安徽省・浙江省・貴州省などで22もの河川が洪水を起こしたとか……。蘇州の日本人学校のバスが襲われる事件も起こった。 【写真】まるで“宇宙強国”の威信を示すかのよう。月の裏側に着陸した中国の無人探査機・嫦娥6号が月面に立てた「五星紅旗」 そんな中、6月25日、中国全土が久々に「朗報」に包まれた。それは、「嫦娥(じょうが)6号」が、世界で初めて月の裏側に着陸し、「月の裏側の砂粒」を持ち帰ること(サンプルリターン)に成功したことだ。おまけに、月の裏側に「五星紅旗」(中国国旗)を立ててきたのだという。 ■ 米ソに後れを取っていた宇宙開発もいまや世界トップレベル 「嫦娥」とは、古代中国の伝説の姫の名前である。ある時、こっそりと「不老不死の薬」を飲んだところ、身体が宙に浮いて、そのまま月まで飛んで行ったとされる。 月面への着陸と言えば、有名なのは1969年に世界で初めて人類が着陸したアメリカの「アポロ11号」だ。当時の中国は、文化大革命の真っ最中で、宇宙など「見果てぬ夢」だった。 しかし、今世紀に入って宇宙開発に名乗りを上げた中国は、胡錦濤政権が始動して間もない2004年1月、「嫦娥計画」を立ち上げた。そして2007年10月、「嫦娥1号」を打ち上げ、初めて間近で月面を観測したのだった。 2013年10月に打ち上げた「嫦娥3号」が、月面(表面)への軟着陸に成功。2020年11月に打ち上げた「嫦娥5号」が、1731グラムの月面(表面)のサンプルリターンに成功した。
そして今年5月3日、「嫦娥6号」が打ち上げられた。約1カ月後の6月2日、世界で初めて、月の裏側への着陸に成功した。6月4日に月面を離れ、25日に無事帰還したというわけだ。 ■ 習近平主席も歓喜 月の裏側へは、地球から直接の指令電波を出せないため、着陸のハードルは高かった。そこで中国は今回、「鵲橋」(チュエチアオ)と呼ぶ中継器を開発した。 七夕伝説によれば、一年に一度、彦星と織姫を引き合わせたのが、鳥類で最も賢いと言われる鵲(かささぎ)だ。そこで中国は、L2(第2のラグランジュ・ポイント)という月の裏側にある平衡点を利用して、「鵲橋」が地球からの電波を中継することで、「嫦娥6号」を見事、月の裏側に着陸させたのだった。 6月25日午後2時過ぎ(中国時間)、「月の裏側の砂粒」を携えた容器が、無事に内モンゴル自治区に落下すると、中国科学院の運搬車が急行。習近平主席が、「緊急祝賀声明」を発表した。 「月探査を進める嫦娥6号の任務の指揮部、そして任務に参加したすべての同志へ。嫦娥6号の任務が円満に成功したという知らせを聞いた。私は中国共産党中央委員会、国務院、中央軍事委員会を代表して、皆さんに熱烈な祝賀と、心からの挨拶を送りたい! 嫦娥6号は、人類史上初の月の裏側でサンプル採取をしての帰還を実現した。これはわが国が建設する宇宙強国、科学技術強国が、また一つメルクマール的な成果をあげたということだ。