月の裏側に五星紅旗を立てた中国、専門家が示唆する月面探査で狙うある「利権」
20年来、月面探索過程の研究を行ってきた皆さんのたくましい月面探索精神、科学技術の勇ましい飛躍は、世界を瞠目(どうもく)させる大きな成果を達成した。ハイレベルでハイエフェクトな月面探索の道を歩み出したのだ。皆さんは突出した貢献をして、祖国と国民に永遠に銘記されるだろう! 皆さんはこの勢いに乗り、月面サンプルの科学的研究を真摯に展開し、引き続き宇宙観測の重要な過程を探し求めてほしい。国際交流協力を強化し、宇宙強国の目標に向けて勇猛果敢に前進してほしい。宇宙の神秘を探索し、人類の福祉の向上に改めて功を為してほしい。中国式現代化によって強国建設を全面的に推進し、民族の復興という偉業に新たな貢献をするのだ!」 以上である。まさに気合十分のメッセージだ。 ■ アメリカのGPSを凌ぐ中国のナビゲーションシステム 習近平主席が説く「宇宙強国」は、今回の月面探索の「嫦娥計画」の他に、北斗衛星ナビゲーションシステム、有人宇宙ステーション、火星探索計画などからなっている。 北斗は、アメリカのGPSに対抗して2000年から衛星を打ち上げ始め、2020年6月に55機目を打ち上げて完成した。世界137カ国と契約し、すでにGPSを凌駕したと誇っている。私も中国へ行くたびに、北斗を使ったスマホの地図アプリにお世話になっているが、たしかに恐るべき精度である。
有人宇宙ステーションは、1990年代に、中国が国際宇宙ステーション計画に参加させてもらえなかったことで、独自の道を歩み始めた。2011年9月に、「天宮1号」を発射。「神舟8号」「神舟9号」「神舟10号」とのドッキングに、順次成功していった。そこから、3人の宇宙飛行士が約半年間、滞在するスタイルを確立していったのだ。 中国の有人宇宙ステーションは、「天和核心船」「夢天実験船」「問天実験船」「有人飛行船『神舟』」「貨物輸送船」がドッキングしてなっている。今年4月には、「神舟18号」の発射に成功した。 火星探索計画は、2016年に始動した。2020年7月に、火星探査機「天問1号」を発射。翌2021年5月に、「天問1号」から火星探索車「祝融号」を火星に着陸させ、探査を行った。 ■ 中国が月面探査に込めた狙い 翻って、今回の月面探査である。私はいまから5年以上前に、月面探査計画に詳しい中国の科学者から、話を聞いたことがある。その科学者は、「2つの利権」と「2つの備え」がキーワードだと語っていた。 「月に関して中国が目指す『2つの利権』とは、中国人の居住権と資源採掘権だ。2030年代までに、これらを確立していく。 また『2つの備え』とは、今世紀中頃から後半にかけて展開される可能性がある『アメリカとの最終戦争』及び『AI(人工知能)との戦争』に備えるということだ。わが国が月の裏側を目指しているのは、地球上からアメリカもしくはAIがどんな攻撃を仕掛けてきても、耐えられるようにという意味なのだ」 その科学者は、会食の席で半ば冗談めかして言っていたので、もしかしたら冗談だったのかもしれない。でも少しは本気だったかもしれない。
近藤 大介