<「光る君へ」の足跡>「自業自得」といえばそれまで? “堕ちた貴公子”伊周 混乱と悲哀を三浦翔平が全身で体現
吉高由里子さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマは、最終回「物語の先に」の放送を残すのみとなったが、個性豊かなキャストによる名演、名場面が、この1年間で数多く生まれたことは間違いないだろう。ここでは、 【写真特集】目がイッちゃってる? 伊周、呪いすぎて精神崩壊! 衝撃シーンに映っていたもの!!
「生々しい権謀術数の男の政の世界」の“敗者”として物語を盛り上げた藤原伊周と、役を演じた三浦翔平さんの足跡(活躍)をたどりたいと思う。
◇傲慢さからくる「人望のなさ」も災いし…
脚本の大石静さんは、2022年5月の制作発表会見で本作について「平安時代の驚くようなセックス&バイオレンスを描きたい」と語っていた。また昨年12月の初回試写会でも「いろいろ生々しい権謀術数の男の政(まつりごと)の世界もたくさん出てきます」ともアピールしていたが、この「生々しい権謀術数の男の政の世界」において、途中から負け続けたのが、三浦さん扮(ふん)する伊周だったようにも思える。
「才色兼備の自信家」として登場し、父・道隆の引き立てによりスピード出世を果たすなど、わが世の春を謳歌するも、道隆亡きあとは、自身の傲慢さからくる「人望のなさ」も災いし、坂道を転げ落ちるのかのように、その地位を失ってしまった伊周。
弟の隆家が、花山院に矢を放つという愚行により都を離れなければならず、結果として母・貴子と生きて再会できなかったのは、不運と言えば不運だが、このことをきっかけに、ねちっこい性格には拍車がかかり、ライバル・道長への恨みを募らせると、妹の定子の死後は“呪詛三昧”。しかし、効果はなく、逆に自身の命を縮めることに……。
◇後半は「呪詛することが唯一の拠り所に」
「自業自得」といえばそれまでの伊周の転落人生だが、三浦さんは視聴者が同情しようにもできないほど、ヒールに徹することで、ドラマの大いなるスパイスとなっていった。
特に後半は「呪詛することが唯一の拠り所になってしまった常軌を逸した伊周」を熱演。38回「まぶしき闇」では、木製の人型を歯でかみ砕こうとしたり、道長の前で狂ったように笑いながら「道長をなぎ払うなり」と呪いの言葉を繰り返したりと、“振り切った演技”で視聴者の視線をくぎ付けにしたことは、改めて言うまでもないだろう。