年初からヤマ場迎える日銀正常化路線、鍵握る米新政権・春闘・円安
1月9日の日銀支店長会議では、中小を含む全国の企業からヒアリングした賃上げの動向と見通しに関する重要な情報が蓄積される見込み。33年ぶりの賃上げ5%超を実現した24年春闘は、3月の集中回答を待たずに妥結の動きが相次いだ。連合は3月18、19日の日銀会合前の同月中旬に、25年春闘の第1回回答集計を公表する予定だ。
為替市場からも目が離せない状況が続いている。7月の追加利上げの際には、円安に伴う物価上振れリスクの高まりが一因とされた。円相場は先週、約38年ぶり安値の1ドル=161円95銭を付けた7月以来となる158円台まで下落。一段の円安進行は日銀の利上げ判断を後押しするきっかけとなり得る。
植田総裁は12月会合後の会見で、輸入物価の前年比が「割と落ち着いている状況」も政策判断の考慮に入れたと述べた。輸入物価は11月まで3カ月連続マイナスで、日銀に切迫感は見られない。ただ、さらなる円安進行は数カ月先の物価を押し上げる要因となる。政府は物価高に対する国民の不満が強まることを警戒しており、為替動向次第では1月利上げ観測が再び勢いを増す可能性がある。
日銀は見通しに沿って経済・物価が推移していけば、政策金利を引き上げて金融緩和度合いを調整する方針を示している。7月の利上げ以降は、経済・物価が想定通りとの判断を維持したまま、12月まで3会合連続で0.25%程度の政策金利を維持した。市場では日銀のコミュニケーションを問題視する声も出ており、さらなる利上げの先送りは対話戦略の再考を迫る公算が大きい。
12月会合では、田村直樹審議委員が物価上振れリスクが膨らんでいるとし、0.5%程度への利上げを提案したが、残る8人は反対した。27日に公表された同会合の「主な意見」によると、ある委員は、経済と物価はオントラックだとし、「海外経済を巡る不確実性も変わりなくあるが、金融緩和の度合いを調整することができる状況だ」と主張した。