柴犬のルーツに出会う旅(2)系統図の頂点に立つ「強運の犬」
昭和30年代の復活運動が高まった際には、『石見犬』という冊子も刊行され、全国から問い合わせが殺到する「石見犬フィーバー」状態だったらしい。それから約60年経った今、河部さんの当面の夢は、JR益田駅前あたりに、石号の像を作ることだ。「『石』だから、石像がいいですね。『強運の犬』だと思うので、その像に触ると強運にあやかれるかも(笑)。『石』にまつわるエピソードはまだまだたくさんあるんです。それこそ、映画化できるような。例えば、中村鶴吉さんのほかにも『石』を欲しがっていた人がいて、タッチの差だったとか。そんな『石号物語』を、これからも発掘していきたいと思います」 ※第3回(最終回)では、石見の山奥にある『石』の生家を訪ねる。日本の気候風土に合った強靭な日本犬「柴」を生んだ故郷はどんな所だったのか。地元の人たちとの触れ合いや『石』の飼い主だった下山信市さんのお孫さんの話を紹介する。
--------------------------------------- ■内村コースケ(うちむら・こうすけ) 1970年生まれ。子供時代をビルマ(現ミャンマー)、カナダ、イギリスで過ごし、早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞(東京新聞)で記者とカメラマンをそれぞれ経験。フリーに転身後、愛犬と共に東京から八ヶ岳山麓に移住。「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、「犬」「田舎暮らし」「帰国子女」などをテーマに活動中