起業家・成田修造「教育で重視すべきは"越境力"」 何かを生み出せる人を増やす起業家教育が必要
ゼロから発想して“学校っぽいもの”をつくりたい
――お父様は知的な方だったそうですが、何か直接学ばれたことはありますか。 父親から「世の中を真っすぐ見ない。いろんな角度で見ろ」「メディアが言っていることを鵜呑みにするのではなく、自分で考えろ」と言われたことが印象に残っています。また、家には廊下が本棚でびっしり埋まるほど大量に父の本があり、参考になりました。僕はそれほど読みませんでしたが、本を読む家に育ったことは大きかったのかもしれません。 ――子どもたちの豊かな成長を考えるうえで、日本の家庭教育や保護者の課題について思うところはありますか。 僕は14歳のときに父親が失踪して家にいなかったので、親から抑えつけられたことがありません。それが自分の成長にとってよかったと考えています。昔から親が子どもを抑え込む家庭は確率的に失敗するケースが多いように思いますし、どこかの段階で「好きにしなさい」と委ねるべきです。 難しいことではありますが、「口には出さないけど、応援している状態」が理想です。僕も2人の子どもがいます。基礎教育の習慣づけは一緒にやっていますが、その子自身の軸を大切にして抑えつけないことを意識していて、中学受験もさせるつもりはありません。過熱する中学受験の領域には、“感染”しないようなるべく関わらないようにしています。 ――現在、起業の準備中とのことですが、予定されている事業内容についてお聞かせください。 個々人と社会人がつながり合えるようなプラットフォームをつくります。若い人が何かやりたいと思ったときに、クラウドファンディングみたいな形で共鳴する大人たちが皆で支援していくような場をつくりたい。個人が発行するトークンを支援者が購入できるようにするなど、株式市場のような仕組みを考えています。ダイレクトな教育サービスではないのですが、教育的な付加価値を持つような形にして、年内にはリリースできるのではと思います。 ――将来は学校をつくりたいという夢があるそうですね。 ビジネスそのものも面白いのですが、もともと人材が育つ仕組みに強い興味があったんですよね。18歳で起業しようと思ったときから、いつか教育をやりたいと考えていました。 今も通信制高校の学校の立ち上げを支援していて、ライフワーク的には教育に関わっているのですが、長期的には、ゼロから発想する形で “学校っぽいもの”をつくりたいと思っています。「学校は必要か」といったところから問い直したいです。 (文:國貞文隆、撮影:尾形文繁)
東洋経済education × ICT編集部