起業家・成田修造「教育で重視すべきは"越境力"」 何かを生み出せる人を増やす起業家教育が必要
「先生」から「コーチ」への役割変化が理想
起業家・エンジェル投資家として知られる成田修造氏。慶応義塾大学在学中に起業し、さらにはITベンチャーのクラウドワークスに参画して大学4年生で執行役員に就任、上場後は取締役副社長兼COOとして全事業を統括してきた。2022年に同社を退社し、現在は複数の社外取締役などに就きながら起業準備を進めている。つねに新たな挑戦を続け、日頃から教育に関しても言及する成田氏は、今の日本の教育をどう見ているのだろうか。 【写真】成田修造氏が日本の教育について語る ――日頃からSNSなどでも教育について言及されていますが、日本の教育をどう評価されていますか。 日本の義務教育はすばらしいと思います。公教育を受けていれば、一定程度の数学的リテラシーと言語的リテラシーが身に付く仕組みになっています。それにひもづく学習塾の環境も整っており、日本の初等教育は世界でも最先端レベルにあります。 一方で、先生の人手不足は大きな課題です。公立学校の教員採用選考試験の採用倍率が過去最低となるなど、かつてのように選別ができていない状況にあります。不登校や学級崩壊など深刻な問題が現場で起きている中、先生をどう確保していくのか。今後は先生の質を担保していくことが難しくなっていくのではないかと懸念しています。 ――学習指導要領が変わって探究が重視されるようになるほか、GIGAスクール構想や高校における情報1の必修化など、ICTに関連した学びも強化が図られています。こうした教育の方向性をどうご覧になっていますか。 公教育としてはやるべき方向性に向かっている気はしますが、GIGAスクール構想や情報1の必修化自体は、もうそれほど新しいトレンドではなく、算数や国語と同じように一般教養化したものであると理解しています。一方で学校現場では、先生たちがキャッチアップするのが大変すぎて、ICT教育が有効に機能しているかどうかは難しい状況にあるのではないかと感じています。 ――こうした教育の変化の中、教員の役割はどう変わっていくべきだと思いますか。 「先生」から「コーチ」へ変わることでしょうか。子どもが答えを持っているという前提に立ち、学ぶものを決めるところを伴走してあげたり、どこに向かいたいかをサポーティブに会話してあげたり、その子に合わせて「コーチ」をしてあげることが、理想的だと考えています。 脳の発達の観点から言うと、10歳くらいから冷静かつ客観的に物事を捉えられるようになるので、小学4年生くらいから「自発的に学びたい」と思えるような環境をいかにセットしてあげるかが重要になると思います。また、知能レベルが大人に近づく14歳頃も、注意深くサポートしていくことが必要になるでしょう。 学年でいうと、小学4~5年生、中学2~3年生ですね。この時期にうまく対応しないと、自発性が失われたり、自身の意思決定ができず自立できなくなったりしてしまう事態を招いてしまうのかなと。 親も子どもが10歳から14歳くらいまでは、その子の特性を見極めながら、さまざまな選択肢を見せてあげることや、その子なりにできることの幅をいかに広げてあげるかということを意識すべきではないでしょうか。いろいろな場所に連れて行ってあげたり、スポーツや課外活動に打ち込める機会をつくってあげたりできるといいですよね。 14歳以降は、むしろ親はあまり干渉せず、その子自身が目標を持って動いていけるように促せるといいと思います。ちょっと難しい本を与えてみるのもお勧めです。