“動画配信の王者”Netflixにライバル勢が猛追、台風の目はYouTubeの本格進出
温故知新の文脈は続く。昭和に生まれたパニック映画の金字塔『新幹線大爆破』の新作もある。『シン・ゴジラ』の樋口真嗣がメガホンを取り、草彅剛が主演する。 さらに独占配信予定の作品に、トップ俳優が制作に携わるものも多い。佐藤健は主演する青春音楽ドラマ「グラスハート」で共同プロデューサーを務め、また直木賞作家・今村翔吾のエンタメ時代小説をドラマ化した「イクサガミ」では、主演する岡田准一が初のプロデューサー業に挑む。
■ディズニーが攻勢 一方でウォルト・ディズニー・カンパニーの攻勢も見逃せない。Disney+(ディズニープラス)のアジア発独占配信作品を強化する。アンペアアナリシスの調査では、ディズニープラスの北米以外のコンテンツ投資額の割合は54%と、競合他社を上回る。 ウォルト・ディズニー・ジャパンのキャロル・チョイ社長は「『SHOGUN 将軍』の世界的な成功から、視聴者の心を動かす作品は言語や形式の通念を超える可能性があると実感した。ディズニーのコンテンツ戦略は厳選された最高峰のオリジナル作品を届け続けること」と語る。
2025年のラインナップには、アーティストのAdoが主題歌を歌うアニメ「キャッツ♥アイ」など注目作品が並ぶ。目玉は柳楽優弥主演のサイコスリラー「ガンニバル」の続編だ。人喰い村を舞台にした攻めた内容で、シーズン1は日本のディズニープラスで最高視聴記録をつくった。 ディズニープラスは、アジアでは、ネットフリックス、アマゾンに続くシェアにとどまる。劣勢の日本市場で飛躍の年となるかが焦点だ。 一方、国内勢でトップを走るU-NEXTは、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーと手を組み、「ハリー・ポッター」シリーズなどアメリカ発コンテンツを売りにする。本多利彦取締役COOは、スポーツライブ配信や音楽配信サービスに力を入れる計画を明かす。
■スポーツのライブ配信拡大 この全方位のコンテンツ戦略は言うなれば、アマゾンと競合する形だ。 アマゾンは、動画配信サービスの中で最もリーズナブルな価格帯でプライムビデオを提供し、ボクシングや「ワールドベースボールクラシック(WBC)」など、この2~3年の間にスポーツのライブ配信ジャンルを拡大してきた。日本のコンテンツ事業本部本部長を務める石橋陽輔氏は、「コンテンツ戦略の柱にアニメとスポーツ、日本発の実写オリジナルの3本を挙げる」と話し、手堅くトップの地位を守っていく。
それぞれ独自色の強いコンテンツ戦略で攻めの姿勢を見せる。だが、動画市場で最も高い収益を誇るのはYouTube。メディアパートナーズアジアの調査によると日本の動画市場の12%をYouTubeが占める。選挙関連動画がYouTubeの稼ぎ頭となる流れも継続されるだろう。 世界的にもYouTubeが市場を牽引する中、本質に触れたコンテンツを連打すれば、台風の目になることは間違いない。 =一部敬称略=
長谷川 朋子 :コラムニスト