古のTT・F1マシンを彷彿とさせる、ネオレトロレーサーレプリカGS1200SS
「男のバイク。」という、現代では少々使いにくくなってしまったキャッチフレーズと共に姿を現したスズキGS1200SSは、TT・F1クラスで活躍したヨシムラGS1000Rをイメージしたネオレトロスポーツバイクだった。 【画像】GS1200SSのディテールと関連モデルをギャラリーで見る(27枚) 文/Webikeプラス 後藤秀之 取材協力:バイク王つくば絶版車館
スズキとヨシムラ、そのコンビネーションが生み出した伝説のGS1000R
スズキにとって「GS」という名前はトップエンドのバイクに与えられる名称であり、その後4バルブ化されて「GSX」という名称へとそれは引き継がれた。 「GS」の名前を一躍有名にしたのは、レーシングコンストラクターヨシムラが手がけたGS1000Rの存在が大きい。スズキのセミワークス的な立場で活動していたヨシムラは、スズキ製のF1フレームに天井知らずと呼ばれたヨシムラチューンのDOHC2バルブのGS1000ベースのエンジンを搭載。180kg前後の重量の車体に、130PSオーバーのエンジンを搭載したGS1000Rは鈴鹿の8耐やボルドール24時間耐久などのTT・F1レースで数々の勝利を挙げた。1983年にはモリワキ製のアルミフレームに4バルブのGSX1000Sベースのエンジンを搭載したマシンで1983年の鈴鹿8耐へとエントリー、戦績は振るわなかったがこのマシンは後のGSX-R750/1100へとつながっていく。 1985年のデビュー以来丸目ニ灯のヘッドライトはGSX-Rシリーズの伝統であったが、少しずつそのデザインは変化していき、2000年にはそのデザインは完全に新しいものへと移行した。しかし、1980年代のレーサーレプリカブームに青春を送ったライダーにとって、丸目ニ灯の耐久レーサーデザインは忘れられぬものであり、スズキのデザイナーの中にもそんな思いを抱えた人がいたのだろう。
GS1000Rのイメージを、21世紀に復活させたGS1200SS
2001年、スズキから登場したGS1200SSは、そんなレプレカ世代の興味を引くデザインを持っていた。GSF1200やイナズマ1200、バンディット1200などに搭載されていた油冷の4バルブエンジンをスチール製のダブルクレージルフレームに搭載し、丸目ニ灯のヘッドライトとシングルシート風のシートカウルを持つこのバイクは、GS1000Rのレプリカ的に仕上げられていた。エンジンが4バルブなのに「GS」と名付けられたことも、GS1000Rを意識していたと考えられるポイントだ。 GS1200SSが登場した時のキャッチコピーは「男のバイク。」であり、乗り手を選ぶセパレートハンドルや無骨な1200ccの油冷エンジン、80年代のレーシングバイクを再現したそのデザインや黒一色のカラーリングが醸し出すその雰囲気はまさに男のバイクそのものの姿であった。追加された赤と黒のツートンカラーは完全にヨシムラカラーであり、そのカタログには「甦るレーシングスピリッツ」というキャッチコピーと共にサーキットを駆けるGS1000Rの写真が使用されていた。2003年モデルではフューエルタンクの形状を変更して、カラーはスズキのワークスカラーと言える青と白のツートンを採用、デジタル表示だったスピードメーターをアナログ化するなどより80年代レーサーのイメージを強めたが、残念ながらこれが最終モデルとなった。