F1ドライバーが活躍するためにはなくてはならない存在……マネージャーの仕事とは?【2024年版全F1ドライバーマネージャーリスト】
F1のシートはわずか20席しかないため、その争奪戦は実に熾烈だ。1950年にイギリスのシルバーストンでF1世界選手権の最初のレース、ヨーロッパGPが行なわれて以来、『我こそはF1ドライバーだ』と名乗ることができるのは、776人に過ぎない。 【ギャラリー】そこには男たちの“人間ドラマ”がある……F1ファンの涙を誘った瞬間10選 このシートを奪うためには、もちろんパフォーマンスは重要だ。しかしそれだけで確実にシートを確保できるとは言えない。いくら才能があっても、ドライブに集中できるようにしてくれる適切な人材、適切な環境を作ることは、非常に重要である。 今日のF1ドライバーの大半は、ドライビングに集中し、パフォーマンスに100%集中できるよう、ドライビング以外の様々なことをこなしてくれるマネジメントチームを組織している。 ヴァージンやマルシャのF1チームでCEOを務めたグレアム・ロードンは、元レーシングドライバーのマーク・ハインズとともにイコールズ・マネジメントを運営しており、ふたりでルイス・ハミルトンや周冠宇をサポートしている。 ロードン氏は、周をマネジメントするにあたっては、できる限りドライブに集中できるよう、それ以外のことをマネジメントチームで担うようにしていると明かす。 「我々が採用しているアプローチは、いわゆる360度アプローチすることだ」 そうロードン氏は語る。 「それはドライバーがレーシングカーをドライブするのを妨げる可能性があるあらゆることを管理するということを意味する。つまり移動、契約交渉、スポンサーシップ、理学療法、健康と食事、税金の処理などだ」 「我々はこれら全ての専門家というわけではない。だから、信頼できるサプライヤーだったり、それらの分野での経験を持っている人たちと協力することになる。なぜならドライバーが人生におけるビジネスの構造のせいでストレスを抱え、それをコントロールできなければパフォーマンスが損なわれるというシナリオに陥る可能性があるからだ」 「一方でマネジメントの全体的な考え方は、アスリートがパフォーマンスを発揮できる環境を作るということにある」 「マークはルイスでそれを開拓した。我々は周についても同じアプローチを採ろうとしている。ドライバーのなかには、契約交渉のためだけにマネージャーを雇う人もいるかもしれない。でも、我々のアプローチは異なるため、ごく少数のドライバーとしか仕事をしない」 ロードン氏は、ドライバーはコース以外の自由時間をどう過ごすかを理解するのは非常に重要であり、それが契約条件に大きく影響する可能性があることを理解していると説明する。 「一部のマネジメント会社は、契約ドライバーを多数抱えており、その場合は知識を買うことになる。でもそれではドライバーの能力を最大限に引き出せない可能性がある。若いドライバーが直面する課題の一部は、ごく一般的なものだ。これまでに見たこともないモノもある。そのため特にF1における契約に関しては、全てを調整することが重要だ」 「ちょっとしたこと……例えばドライバーがある関係者と一緒にいる時、あるいはそうでない時、どれだけ良いパフォーマンスを発揮できるかは分かっている。ドライバーの契約には、そういったことも反映する必要があるんだ。そうしないと、ドライバーの祖父にパスを手配するかどうかで、チームと永遠に争うことになるかもしれない」 「もうひとつの典型的なケースは、チームとスポンサー活動をする日数を交渉した後、個人スポンサーとしての活動日数に不均衡がある場合だ」 「通常ドライバーのスポンサーは、レースの状況と個人的な状況とに分かれているものだ。ドライバーがレーシングスーツを着て、ヘルメットを被り、メカニックと一緒にいる時はまさにレースに関する状況だ。自宅で猫と過ごして、コーヒーを飲んでいる状況とは全く異なる。しかし点と点がつながっていると、個人的にスポンサー契約を交わした場合、活動を履行するための日数が足りない場合がある」