THE YELLOW MONKEY 東京ドーム公演、「演出」は音楽をどう引き立てた? 映像作家・山田健人が明かす
シンプルだけど迫力とカッコよさを両立できる演出になった
山田は今回のお気に入りの演出に、ライブの本編の最後に披露したニューアルバム収録の『ホテルニュートリノ』を挙げた。 山田:この楽曲からイメージできる、とある夜の街角のCGをこちらで用意して、その街角みたいなものがステージの後ろのLEDに建っているんですね。街角なので建物が何軒かあって、そこにネオンの看板がいくつもあって。その看板がこの曲の歌詞からインスパイアされたものや、THE YELLOW MONKEYのこれまでの楽曲のタイトルからインスパイアされたもので、ちゃんとオリジナルな街角にして。街自体はそこにあるんだけど、頭上にある大きなオーロラビジョンに星空を出したりしたんです。東京ドームに常設されている設備とこちらで用意した設備を一枚物として見せることも実はしていましたし、それがうまくいったなと思っています。 また、同アルバム収録の『ソナタの暗闇』の演出も解説する。 山田:我々が持ち込んだビジョン3面分を全部歌詞に使いました。歌詞全編の輪郭が最初から最後までステージ上に出ていて、それは一行ずつ丁寧に書かれているんじゃなく、この曲で言うと“ソナタの暗闇”ってワードや歌詞の一行、センテンスごとに区切ってランダムに配置されている感じで。その歌詞を歌うと、輪郭だけだった歌詞に色が付いて浮かび上がってくるような。最初は輪郭だらけの文字だったものが、塗り絵のように最後はぎっしり全部塗られるという。この手法は極めてシンプルだけど、すごく迫力とカッコよさを両立できるなって感じで、またやりたかったので今回やれてよかったです。しかもドームみたいなデカいところで。これは観ていただいたみなさんの記憶にもしっかり残っているんじゃないでしょうか。
立体感的に楽曲がより深みを増した
山田は、ライブ中に流れたドキュメンタリー映像についても言及した。 山田:吉井さんの喉の病気を克服してステージに戻るまでのリハーサルの映像や、メンバー含めたインタビューも混ざるような映像で。これは僕のベストフレンドのエリザベス宮地くんが吉井さんのこの4年間というか、ずっと追いかけていて。その宮地くんが録り溜めた映像の一部を編集していただいて、それを流して。その後に披露された楽曲が1997年にリリースの6枚目のアルバム『SICKS』に収録された『人生の終わり (FOR GRANDMOTHER)』でした。命の終わりに対する思いを歌ったような曲で、ドキュメンタリーの中でも吉井さんが、大きな病気を経験されたことで命や自分の人生に対する考え方がいい意味でも変わっていったっていう話が出てくるんですが、そういう部分にかなりリンクするような感じで。これがすごくよかったですね。演出がどうこうっていうことより、ドキュメンタリーとかがちゃんと必然性があるかたちできちんとライブの合間に流れたことは、ただシンプルにいい楽曲を聴いて盛り上がるだけじゃない、それが僕はTHE YELLOW MONKEYの魅力だとこれまでも思っていましたけど、すごく彼らの持つロックのいい奥行きというか、心にグッとくる瞬間が必ずあるような部分に確実になったと思います。 ライブはアンコールでニューアルバム収録の『復活の日』の映像が流れ、ライブが終わるという流れだった。 山田:この映像はライブの2週間前くらいに吉井さんだけ登場する映像を撮りたいですと言って、撮らせてもらった映像です。そもそも新曲なので吉井さん含めみなさんが「歌詞は出したいよ」というお話があって。ライブの最後に『復活の日』というタイトル通り、ここから再出発するというメッセージがすごく込められている楽曲なんですけど、それを音源として流そうと。歌詞だけ出ているのはどうか、みたいな議論があったんですけど、そこに歌っている吉井さんがまっすぐカメラを見つめたワンカットの絵があったらより良いんじゃないかと提案させてもらって、撮らせていただきました。この映像もすごく僕も気に入っていて。ライブで歌詞だけ出ていてもグッとくると思うんですけど、ドームのオーロラビジョンに歌詞が出ていて、こちらで用意したLEDに撮り下ろした映像が流れることで、楽曲がより立体的になり深みを増して伝わったかなと思っています。これもやってよかったと思っています。 山田健人の最新情報は、Xの公式アカウントまで。 『THE PLAYBACK』は、音だけでは完成しない世界で表現を続ける映像作家・山田健人が、音だけの世界=「ラジオ」でその頭の中に浮かんでいる世界や作品について言語化していく。オンエアは毎週金曜24時30分から。