マクドナルドの客単価が“大幅に増加”。「安かろう、悪かろう」のイメージから抜け出せた理由
イートインは減少も、持ち帰り客が増えた
SWSの拡大を支えたのがテイクアウトやドライブスルーを通じた持ち帰り客、そしてデリバリーです。決算資料に表示されたグラフをみると19年12月期の段階でイートイン、テイクアウト、ドライブスルーはそれぞれ売上の約3分の1ずつを占め、デリバリー客はごく僅かでした。 それがコロナ禍ではイートイン客以外が伸び、23年12月にはイートイン客以外でおよそ8割を占めるに至りました。中食需要の増加が主な理由ですが、郊外立地も増収をもたらしています。コロナ禍では都市部に重点を置く飲食チェーンの業績が悪化した一方、すき家や寿司チェーンなど、郊外立地をメインとする企業では業績の改善が見られました。 そして客単価の増加もSWS増収に貢献しています。持ち帰り・デリバリー客はイートイン客よりもファミリー層や複数人の比率が高いため、お店に多くお金を落とす傾向にあります。また、近年段階的に実施している値上げも客単価の増加をもたらしました。23年1月末の時点でビックマックは税込450円でしたが、7月には450~500円となり、全メニューの内3分の1を値上げした今年1月の値上げでは480~530円まで引き上げられました。 ※値段を幅で表記しているのは通常店、準都心店、都心店とで価格が異なるため
「脱・安売り路線」が成長の土台に
以上のように持ち帰り客とデリバリーの売上増加が全社業績に貢献した形ですが、その土台となったのは以前より進めてきた脱・安売り路線にあると筆者は考えています。 マクドナルドは1987年の流行語にもなった390円の「サンキューセット」で安売り路線を歩むようになり、バブル崩壊後の90年代、00年代は不景気下に合わせて異常なまでの安売りをするようになりました。2002年にはハンバーガーを過去最安値の税込62円で販売しています。当然ながら極端な安売り路線は利益を圧迫しました。 その後も安売り路線は継続した一方、業績を回復させるべく店舗のFC化を進めました。2004年に3割程度しかなかったFC比率は14年度に7割まで拡大しましたが、急速なFC化が店舗におけるサービスの質の低下をもたらしてしまいます。結果的に業績は一時的に改善するも再度悪化し、マクドナルドに関して消費者の間では「安かろう、悪かろう」のイメージが定着するようになりました。 この安売り路線をやめたのが2013年に社長に就任したサラ・カサノバ氏です。一部でお得な商品を残すも段階的に値上げを実施し、利益の改善を図りました。店舗の質改善に関しては全国の店舗を回って顧客や現場の意見を取り入れ、賃上げ等でインセンティブを強化するとともに人材教育を強化しました。 また、ファミリー層や大人が来たくなるよう、古い店舗の改装や店舗改革を進めています。カサノバ氏以降の脱・安売り路線はマクドナルドのブランドイメージを改善し、2015年からコロナ前の19年度にかけて増収増益が続きました。 安さ目的で行く店から、多少割高でも行きたい店に変化できたわけです。仮に以前のイメージのままだったら、中食需要の増加とはいえコロナ禍でここまで躍進できていなかったと思われます。