米・連絡橋崩落事故、その後の対応は
3月下旬に米東岸ボルティモアで発生した大型コンテナ船の衝突による連絡橋崩落事故を巡り、米司法省は24日、残骸撤去や代替水路設置などの事故処理費用について、船主のシンガポール企業グレースオーシャンと船舶管理会社シナジーマリンが1億198万ドル(約156億円)を支払うことで和解したと発表した。ただ、米司法省は「今回の和解には連絡橋の再建に対する損害賠償は含まれていない」としており、引き続き損害賠償を巡る協議が続きそうだ。
米司法省は9月18日、メリーランド州連邦地裁に事故処理費用に関する民事訴訟を起こし、グレースオーシャンとシナジーマリンに対して1億307万8056ドルの損害賠償を請求していた。
同省によると、今回の事故処理では、崩落した連絡橋やコンテナ船の残骸の鋼材、コンクリート、アスファルトなど約5万トンを水路から撤去。6月10日に水路が復旧するまでの港湾物流のボトルネック解消を目的に一時的な代替水路も設置した。
今回の和解金は事故により直接被害を受けたり、対応に関わったりした複数の連邦機関の予算に充てられる。
米司法省のベンジャミン・C・マイザー首席副司法次官は今回の和解について「6人の命を奪い、計り知れない被害をもたらした近年最悪の交通被害の一つから7カ月近くがたち、本日の和解で重要な節目を迎えた」と評価。
その上で「司法省の弁護士が懸命に働いてくれたおかげで、訴訟開始からわずか1カ月余りで、早期和解を実現できた。この和解に基づき、連邦政府によるクリーンアップ作業の費用は、米国の納税者ではなく、グレースオーシャンとシナジーマリンが負担することが確実になった」と述べている。
グレースオーシャンとシナジーマリンは4月1日、メリーランド州連邦地裁に米国法に基づく船主責任制限の適用を申し立てており、責任制限額は4367万ドル(約67億円)と試算されている。今回の事故処理費用は同責任制限の枠外で和解したとみられる。
このほか、グレースオーシャンは最近、今回の和解とは別に、米沿岸警備隊国立汚染基金センターに油濁防除費用として9万7294ドルを支払ったという。
日本海事新聞社