トランプも金正恩も尋常でない…韓国の弾劾局面で朝米直取引の可能性(1)
「12・3非常戒厳」事態と国会の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾訴追案可決で外交に空白が生じた中、朝米「直接取引」の可能性に言及されている。韓国の権限代行体制と米国優先主義のトランプ政権発足、核保有路線を追求する北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長体制という構図自体は8年前の朴槿恵(パク・クネ)前大統領弾劾局面と同じだが、「主演俳優」のキャラクターは変わった。 対北朝鮮問題で「初心者」だったトランプ氏はすでに金正恩委員長に3回も会った経験があり、金正恩委員長も今では核武力完成に向けて後先考えず疾走した「ロケットマン」ではないという点でだ。双方から「韓国スルー」も可能という雰囲気が感知される中、トランプ政権が序盤に速度を出す場合、韓国の大統領不在中に朝米首脳会談の早期実現も可能という指摘が出ている。 ◆忠誠派の特使任命…トランプ式の北朝鮮政策予告弾 トランプ氏が14日(現地時間) 、「私の策士」と呼んできたリチャード・グレネル元駐ドイツ大使を対北朝鮮業務などを扱う特別任務特使に指名したのはその信号弾とも考えられる。トランプ氏は「ベネズエラと北朝鮮を含む世界で最も危険な(the hottest)ところで仕事をすることになるだろう」とグレネル氏指名の背景を説明した。ウクライナ・ロシア、中東、人質特使に続く4人目の特使人選であり、北朝鮮問題を優先順位に置いていると読み取ることも可能だ。 これをめぐり、トランプ氏が非核化追求という伝統的な外交文法に拘束されず、自分のスタイルで北朝鮮問題を解決していく意志を表したという評価が出ている。 グレネル氏が同盟との連携より圧倒的な力による果敢なトランプ式外交を支持するという点も、朝米対話の速度戦の可能性を後押しする。グレネル氏は「トランプ氏が金正恩委員長に会ったのは(彼を)承認したのではなく、彼が近隣諸国と米国の利益を脅かすという認識に基づくものだった」とし「それがトランプ氏がやるべきこと」(7月の全党大会)と話した。3月のポッドキャスト出演では「戦争を避けたいのなら国務長官にXXXを置くのがよい」とし「強い国務長官が必要だ」と述べた。 トランプ氏も北朝鮮との直接対話の可能性を繰り返し示唆している。「私は金正恩をよく知っていて、仲が良い。私は彼がまともに相手にした唯一の人だ」と強調した12日の米時事週刊誌タイムのインタビューが代表的な例だ。 外交関係者の間ではグレネル氏について、北朝鮮を交渉テーブルに引き出すべきというトランプ氏の意中が正確に伝えられれば直ちに行動に着手できる人物という見方が出ている。トランプ氏は1期目も実務交渉で大小のやり取りを通じて合意案を作る伝統的な「ボトムアップ」方式でなく、首脳間で談判をする「トップダウン」方式で迅速に朝米首脳会談を実現させた経験がある。 「24時間以内にウクライナ戦争を終わらせることができる」と公言するなど任期初期の外交的成果に大きな関心を見せるトランプ氏としては、ロシアを相手にしながら、同時に派兵などですでにウクライナ戦争に深く関与している北朝鮮を扱う可能性もある。 梨花女子大の朴仁鎈(パク・インフィ)国際学部教授は「2期目のトランプ政権がロシア・ウクライナ戦争、中東事態を解決した後、北の問題に着手するという見方が優勢だったが、今回のグレネル氏指名でこうした外交懸案に同時に接近する可能性に言及されている」と指摘した。 弾劾政局を経験した匿名の元当局者は「トランプ氏は誰よりも金正恩委員長と北核問題をよく知っているという自信に満ちていて、1期目のように韓国側の意見を聞いたり対北政策を調整したりする必要性自体を感じない可能性がある。リーダーシップ空白の韓国の国内政治的状況は意に介さず、予想以上に速いペースで金正恩委員長と直接対話する可能性があるだけに、いつよりも執拗な対米外交が求められる」と憂慮した。