「生き延びることが本当は一番の正義」…白石和彌監督、集団抗争時代劇「十一人の賊軍」を語る
「京都をはじめ、まだまだすごくレベルの高い職人さんがいっぱいいますが、それを継承して、誰かがやっていかないと、本当に(技術が)なくなっちゃいます。本来は、国とかがお金を出して継承につなげるべきだと思いますけど、日本は国が文化への関心がないんで」
今年9月、真田広之がプロデュース・主演を務める米国のドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』が、米国テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞で、作品賞を含む史上最多の18部門を受賞した。もし、日本という国が、自国の映像文化として時代劇を誇るのならば、白石の言葉を重く受け止めるべきだろう。
「昭和っぽい」を超越して
ところで、白石の監督作を振り返ると、「凶悪」はじめ、「過去」を舞台にした作品が目立つ。その理由を尋ねると、「いや、僕が聞きたいですよ」と言いながらも、答えてくれた。
「僕が撮るものが『昭和っぽい』っていうのはあると思うんですよ。デビューしたての頃はすごくいやだったんですよ、その感じが。『なんか、お前が撮ると昭和っぽいな』ってすごい言われるわけじゃないですか。『いや、俺だってポップにできるよ』と思って、やってみると、やっぱり昭和っぽいのを自覚して」
でも、それがアドバンテージになった。「『孤狼の血』とか撮ると、そのスキルが生きるわけですよね。ああ、そうなんだ、これは長所なんだって思えて」と言う。そして、「時代劇やったら、より(自分に)マッチした感じなんで、昭和でもなかったってことかな」と笑った。
ただ、その作品はまぎれもなく、今を生きる人たちに向けられている。デビュー作「ロストパラダイス・イン・トーキョー」(2009年)の公開時にインタビューした時、白石はこう語っていた。「1974年生まれの僕らの世代は、社会に出た時にバブルが崩壊。そこから延々と不況が続き、社会に希望が持てない人がたくさんいる。そういう人たちにとっての希望って何だろう。(同作もそうだが)これからも追求していきたい」と。