「生き延びることが本当は一番の正義」…白石和彌監督、集団抗争時代劇「十一人の賊軍」を語る
監督・白石和彌(かずや)、主演・山田孝之、仲野太賀による集団抗争時代劇「十一人の賊軍」(配給・東映)が11月1日、公開となる。描かれるのは、戊辰戦争のさなか、越後・新発田藩の捨て駒として「最前線」に送り込まれた罪人たちの死闘。砲撃、爆発、接近戦……迫力と生々しさを帯びたアクション、そして登場人物それぞれの生き方を、誰でも楽しめるエンターテインメントとして描きながら、浮き彫りにしようとしたものは――。白石に話を聞いた。(編集委員 恩田泰子、文中敬称略) 【写真】俳優デビューから今年で25年の山田孝之さん。今後について「目の前にある、その時にやるべきことをやるだけ」と、きっぱりと語る
戊辰戦争中の「裏切り」題材
題材は、戊辰戦争中、新政府側と奥羽越列藩同盟の板挟みになった新発田藩の「裏切り」。そのままでは両勢が新発田で鉢合わせしかねない状況下、藩家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は一計を案じ、駕籠(かご)かきの政(まさ)(山田孝之)ら刑場送りの罪人たちを「決死隊」として駆り出す。「新政府軍の侵攻から砦を守れば無罪放免」と約束された罪人たちは、若き藩士・鷲尾兵士郎(仲野太賀)らが同行する中、戦いに臨むが、多勢に無勢。地獄を見る。
脚本は「孤狼の血」などでも白石監督と組んだ池上純哉、原案は名脚本家・笠原和夫(1927~2002年)による1964年のプロット。笠原は「仁義なき戦い」「博奕(ばくち)打ち 総長賭博」「大日本帝国」など実録映画、任侠(にんきょう)映画、戦争映画の名作群をのこした。「十一人の賊軍」は、脚本も書いていたが、映画化のゴーサインが出なかったため自身で破り捨ててしまったという。
壮大なセット「壊すために作った」
撮影は、2023年8月から11月にかけて行われた。そのうち9月上旬から10月下旬の2か月間は、千葉県・鋸南(きょなん)町に造られたオープンセットで。記者も撮影を見学したが、壮観だった。東京ドーム1個半ほどの広さの場所に、もともとの地形を生かしつつ、砦の大門、本丸、物見やぐら、そして「攻防の肝」となる吊(つ)り橋とそれがかかる川などが造られた。そんなセットが、物語が進むにつれ、どんどん破壊されていく。