なぜ中居正広を“出禁”にしなかったのか…「フジの初動に疑問」と元テレ朝法務部長
誰も望んでいなかった現在地 「真の解決」に必要なこと
こうした毅然とした態度は被害女性に「会社はあなたを守る」というメッセージを伝えることにもなる。逆に中居氏やその関係者と変わりなく付き合うことは「会社は大物芸能人を選び、自分は切り捨てられた」と被害女性に感じさせ、事件の真の解決を遠ざけかねない。 しかし今回、フジテレビが被害女性を最優先にした「初動」をしたのかというと疑問が残る。報道によれば、同社は中居氏から事件の事実関係を聴取することさえしていないという。被害女性は中居氏と親密な同社幹部の責任も指摘したが、関係者の対応は鈍かったとも報じられている。もしそうなら、被害女性が「自分の訴えは聞き流された」と感じても無理はない。 その結果、現在どうなっているか。中居氏は、9000万円ともいわれる解決金で解決したと思っていた事件が再燃し、フジテレビどころか全局のレギュラー番組休止に追い込まれている。フジテレビは、女性と向き合った対応をしていたのかどうか厳しい目を向けられている。そして、被害女性は被害の苦しみと怒りを訴え続けている。こんな現在地は、誰も望んでいなかったはずだ。 事態は混迷を深め先は見えないが、今後、どんな展開になるにせよ、被害女性の思いに寄り添うことだけは忘れてはいけない。そして、なぜこんなことになったのか事実関係を徹底的に調べるべきだろう。その先にしか「真の解決」はないと思う。 □西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
西脇亨輔