大記録よりもチームの勝利を最優先。監督の仕事は、そのための采配を振るうこと。岡田監督の下した決断は妥当だと思う【張本勲の喝!!】
非情なる采配
岡田監督は7回まで一人の走者も出さなかった先発の村上[写真]を交代させ、チームの勝利を追求した[写真=川口洋邦]
開幕から1カ月が過ぎた。今季は両リーグとも落ち着いた滑り出しのように思う。突き抜けて首位を独走しているチームもなければ、昨年の阪神のように開幕9連敗など大きく出遅れたチームもない。もちろん多少の差はついているが、下位に位置しているチームにしても巻き返すチャンスは十分にある。 ただし、まだ始まったばかりだと安心していると、気づいたころには取り返しのつかない差になってしまっていることはよくある話だ。そうなると選手たちは「今年はもうダメだ」と早々にあきらめて個人成績に走るようになるから、チームとしては常に貯金がある状態、最低でも5割前後の戦いをしていきたいところだろう。大きな連勝はなくてもいいが、大きな連敗だけは避けなければならない。 さて、少し前の話になるが、阪神の投手(村上頌樹)が巨人打線を相手に7回までパーフェクト投球をした試合があった(4月12日、東京ドーム)。完全試合まで、あと2回。しかし8回に回って来た打席で代打を出され、お役御免となった。東京ドームで観戦していた観客はもちろん、テレビで試合を見ていたファンも残念に思ったことだろう。この時点で阪神は1対0とリードしており、球数はまだ84だった。 賛否両論あると思うが、私は岡田(岡田彰布)監督が下したこの決断を支持したい。ファンは大記録(プロ初勝利が完全試合)が見たいだろうし、夢をつぶすな、何で投げさせないのかと不満に思っただろうが、岡田監督はチームの勝利を最優先させただけの話だ。こういう非情の采配ができる監督はそうはいない。 投手が7回まで良かったのは“たまたま”で、あと2回も絶対に抑えられるとは限らない。岡田監督は危ないと判断したのだろう。8、9回の重圧は、それまでのイニングと違ってとてつもなく大きい。であれば・・・
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週刊ベースボール