【広島・秋山翔吾のバッティングバイブル】NPBシーズン最多安打記録ホルダーが、唯一無二の“打撃理論”を実演解説!
【書籍『秋山翔吾のバッティングバイブル』 発売前に先読み!<前編>】 巧みなバットコントロールを武器にして2015年にはシーズン216安打の日本プロ野球新記録を樹立したほか、これまでに最多安打のタイトルを4度獲得。さらにはメジャーの舞台でも安打を放つなど、球界屈指の経験値を誇る秋山翔吾選手。そんな安打製造機の技術を詰め込んだ書籍『秋山翔吾のバッティングバイブル』(定価1980円税込)が5月2日に小社より発売予定。ここでは、その一部を抜粋して公開する。 【選手データ】秋山翔吾 プロフィール・通算成績・試合速報
昨季の好スタートに生きた手と体を別々に使う打ち方
日本のプロ野球もここ数年、全体的に投手がスピードアップしていると思います。その中で2023年は苦しみながらも変化を重ね、少しずつ良くなっていく兆しも感じました。 まずオフ期間から春季キャンプまで取り組んでいたのは、バットを立てた状態で構えて、ボールに対して上からかぶせていく打ち方です。僕はもともとバットを寝かせておいて、体が回る動きと一緒に肩口からバットを出したいタイプ。そしてやや下から上にスイングし、ボールの軌道へバットを水平に入れていくというのが通常です。
一方、DeNAの宮崎敏郎選手や牧秀悟選手をイメージしてもらえれば分かりやすいと思いますが、バットを立てて上からかぶせる打ち方というのは、テークバックのときには後ろのヒジがしっかりと捕手側に入り、そこからトップの状態を経て、今度は後ろヒジがグッと中に入って体の前に出ていく。つまり、しっかりヒジを動かしながら、手と体を別々に使う感覚になります。 結果としてはオープン戦で手応えがなく、「実戦ではやはり投手にタイミングを合わせることが前提だな」と再認識しました。そこからは開幕に向けて、タイミングの合わせ方を考えるほうにシフト。 しかしそんな中、シーズンが始まって4月に入ると1つの成果が表れました。外角高めのストレートに対して三塁方向へのライナー、あるいは三塁線や三遊間を破るゴロなど、久しぶりに左方向へ強い打球が出るようになったのです。それまでは外角高めに対して体ごと寄っていき、ボールを下から持ち上げてレフト前へ落とすという感覚だったのですが、この時期はボールに対して入っていきながらも、バットを体からポーンと離して強く押し込むことができた。まさに手と体が別々に使えている感覚でした。