【広島・秋山翔吾のバッティングバイブル】NPBシーズン最多安打記録ホルダーが、唯一無二の“打撃理論”を実演解説!
クロスステップを受け入れ終盤はバットの出方を重視
こうして昨季の滑り出しはわりと順調だったのですが、課題としてはなかなか打球が上がらず、さらに試合を重ねていくとどうしてもクロスステップが強くなり、バットの出方もスムーズさを欠いていきました。 それが良くなったのは、シーズン終盤の9月下旬です。その時点では修正をあきらめ、クロスステップを受け入れた上でどうやって打つか、体の使い方を考えていました。そして、打ち方を大きく変更。
具体的には構えのスタンスを広げて重心を落とし、頭を少し前へ倒してあらかじめ上体をクラウチング気味に傾けました。4月などは上体を真っすぐ伸ばした状態でスッと立ち、上から叩いてハンドリングというのをイメージしていましたが、体の回し方を少し傾けるイメージを作り、内側から外側へ振りやすいようにしたわけです。 さらに構え方だけでなく、足の上げ方も変えました。もともとは軸足側に重心を置いて、踏み込み足はちょこんと地面に着く程度。そこからゆったりと足を上げ、しっかり間合いを作っていました。ところが、クロスステップが強くなるとだんだんボールに対してアクセルを踏んでいくことが怖くなり、踏み込み足を強く着くことができなくなっていった。その結果、前に体重を乗せ切れずに打つことが増えてしまっていました。 そこで、打ち方を変えてからは両足へほぼ均等に体重を掛け、重心は真ん中に置きました。そして踏み込み足をいったん踏んでからパッと上げ、「軸足→踏み込み足」の体重移動ですばやく打ちに行く。つまり、投手方向へ突っ込んでいくような要素をあえて入れたわけです。 本来はボールとの距離をしっかり保ち、バットを振れるスペースを作ってゆっくり大きく動くというのが僕のスイングなので、これは真逆の打ち方。ただ、間合いやスイング幅こそ十分には取れないものの、ボールとの距離をわざと近づければ「時間がないから早くバットを出さなきゃダメだ」というのを体に刷り込ませることができます。そうやって本能的な反応を引き出したことで、実際にバットの出方は良くなっていきましたね。
週刊ベースボール