過去史上最速で“王手”。日本代表の行方を決めた「とにかく、本当に大きかった」試合とは?【どこよりも早い森保一監督のW杯最終予選6戦総括】
前回予選のサウジ戦「岳のミスは私のミス」
──これまでアウェーで勝てなかった鬼門、サウジアラビア戦は? 森保監督「前回のサウジ戦も悪くはなかった。岳(柴崎)のミスは私のミスでした。中盤で攻守にアグレッシブに、との指示を忠実に行っていた岳が後半疲れ果てていて、交代をしようかどうか私が迷っている間にパスミスが起きた。疲れで判断力が鈍っていたのにすぐ交代しなかった自分のミスでした」 ──今回は2-0と前後半でゴールを奪う展開でした。 森保監督「サウジ戦後の大地(鎌田、クリスタル・パレス)のコメントを聞きましたが、まさに全てを表してくれたように思います(鎌田は、すごく難しい試合になるのは分かっていたが、自分たちは前回の敗戦の経験を上手く使うことができた、と発言)。前回の最終予選を経験した選手たちが、ヨーロッパで日々やっていれば緩みや甘さまで行かなくても、何となくアジアで勝てるだろうと思っていた前回から、覚悟を持って足りなかったところを追求して、考え、本当に最大限の力で試合に臨んでいます」 ──疲れて足が止まった、パフォーマンスが激変するといった時間帯がありません。 森保監督「選手は高いレベルでお互いを認めています。もちろんフル出場したい気持ちが強いのは分かっていますが、5人の交代枠を、後半の15分から20分、25分から30分と使いながらそのたびにさらにギアを上げて選手同士“つないで”勝つ。チームの競争力のレベルが上がったのを感じています」 ──この予選は27人を呼び、試合日は4人をベンチ外とする招集方法でした。 森保監督「4人をベンチ外とするのと同時に、これだけの選手をベンチに置かなければならない状況は本当に申し訳ないとしか言いようがないのですが。ただ先発だけではなく、戦術的な選手交代をしても試合内容は全く変わらない。そういう戦いができています」 ──どの試合も落ち着きぶりが印象に残ります。 森保監督「現実を受け入れた試合展開に持ち込んでいるからだと思います。アウェーのサウジアラビア戦やインドネシア戦、先日のアウェーの中国戦もW杯本大会でも起きうる状況、例えば押し込まれる時間が必ずあります。その時にアジア相手なのに何で? と相手を見下してしまうとそれが崩れる要因にもなってしまう。この最終予選、選手たちはどんな試合展開も現実として受け止めて、厳しい時間帯は耐え忍んでチャンスを待つ。ピッチで最適、最大の努力をしている」 ──インドネシア戦は試合直前の豪雨と雷に苦しむかと思いましたが、雨が止んでギアを変え、さらに相手が負傷で数的優位の時に畳みかけて前半を折り返しました。中国戦もCKでゴールを奪う。前回、全て1点差で6試合地点を通過した試合運びと比べても違いがあります。 森保監督「いつもミーティングで賢く、したたかに試合をしようと言い続けてきました。この予選、選手に何があっても動じないメンタリティが出てきたのでさらに冷静に、かつアグレッシブに、ここまで6試合を重ねてこられたんだと思います」(後編に続く) 取材・文●増島みどり(スポーツライター)
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