小倉智昭「吃音があったから養われた」今明かす『とくダネ!』オープニングの裏側とは。古市憲寿が聞く〈テレビの本音〉
◆話す内容は、事前に誰にも伝えなかった ──名物コーナーだったのは間違いないですね。メモなしでずっと話してました。 そうそう、中身も全部自分で決めていました。あれが面白かったのは、共演の笠井アナウンサーや佐々木恭子アナウンサーにも、何をやるか事前に振ってなかったんですよ。 それどころかディレクターにも言ってなかった。 ただ、扱う新聞記事がある場合は、この記事だけ用意しておいてくれと言って渡しておくんですね。 毎朝、自分の中では展開を考えておいて、一応短い時間でも起承転結みたいなものを作っておくわけですよ。でも、笠井君とか佐々木君は、それを突然ぶち壊してくるんですよ。 ヘンな質問をしてきて流れを崩したりする。それはそうでしょう、こっちの想定なんか知らないんだから。でもそれで腹が立つわけでもなくて「ああ、そこに入ってくるんだ」と思って、それはそれで面白かったですけどね。 ただ、スタッフは冷や冷やしていたでしょうね。本番まで何を言うかわからないんだから。 そんなわけで8時のオープニングトークが終わった段階で、時間が押してしまって、もう後ろのほうの枠が飛んじゃっていることも珍しくなかった。 だから、初期は担当ディレクターからのブーイングがすごかったですよ。「何のために俺たち取材に手間暇かけているんだ」ということです。
◆起承転結を意識していた ──オープニングでは常に5分とか10分よどみなくしゃべっていたじゃないですか。あれはどのくらいの事前準備があったんですか。 実は事前の原稿なんかは用意していません。しないほうがいいとすら思っています。 子供の頃、吃音を治す過程で、作文を書くときに必要な起承転結が、しゃべりにも必要だっていうのに気がついたんです。しゃべることは作文だというふうに思ってたから、文章構成をしてしゃべるみたいなところがあります。 僕のスポーツ中継って行き当たりばったりしゃべってはいますけど、一方で、全部作文みたいな感じでしゃべっているんですよ。でも、予定稿ではあんまりしゃべりたくないので、その場で見たものを一応、頭の中で文章化したうえで口に出すみたいな感じで。 ──それを事前に文字に起こすわけではないんですね。 頭の中で起承転結をイメージしておくだけ。新人のアナウンサーと一緒に仕事をすると、彼らは原稿を用意したうえで、さらに赤字を加えたりとか、しゃべることを書きだしたりとかって準備してるじゃない? 「そういうのは、やめたほうがいいよ」っていつも言ってたけどね。「なるべく書かないほうがいいよ」って。