スポーツは誰かの力になる【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第98回
お正月の日本を驚かせたのが石川県の能登半島地震でした。多くの方が犠牲になり、今のなお避難所で苦しい生活を余儀なくされている方がたくさんいらっしゃいます。心からお悔やみを申し上げるとともに、みなさまが1日も早く普通の生活を取り戻せることを祈っております。 【写真】山本キャスターの最新フォトギャラリー 震災やコロナ禍など天災や災禍に見舞われた時、真っ先に自粛をするのが、芸能やエンタメなどに類するものです。社会インフラが不安定な中で、それ以上に優先すべきものがあるのは、当たり前のことかもしれません。 その一方で、被災した方たちが娯楽を望んでいないかといえば、果たしてそうでしょうか。今はまだそんなことまで考えられないとは思いますが、いずれ、笑顔になりたいと思える日がくるのではないかと推察しますし、そうあってほしいと思います。 今回は野球に限ってお話をさせていただきますが、野球が開催されなくても、私たちは生きていけます(選手や関係者のことはいったん横に置かせてください)。 多くの人が被害に苦しんでいる時に、物資の補給やインフラの復旧より優先して開催するものでは決してないでしょう。生命や生活の維持よりも大切なものはありません。 一方で、震災で大きな被害を受けた、阪神淡路大震災の時のオリックス、東日本大震災の時の楽天のように、被災したチームが同じように被災された方々に大きな勇気を与えた例を私たちは知っています。 困難に直面したという意味では、2019年にエンゼルスのタイラー・スカッグス投手が、遠征先のホテルで急死した時のことを思い出します。悲しみにくれるエンゼルスの選手たち。当時在籍していた大谷翔平選手も兄貴分として慕った選手で、亡くなったときはチームだけでなく、球界全体が鎮痛なムードに包まれました。 その後に行なわれた本拠地での追悼試合で、エンゼルスの投手陣は継投ノーヒットノーランを達成します。決して強豪とは言えないエンゼルスの投手陣がそんな偉業を成し遂げたことに、誰もが驚くと同時に、「誰かのために」という思いが力を与えることが本当にあるのだと思ったものです。