ホンダ・日産の統合は、日本の製造業「終わりの始まり」か…いまや「最後の望み」が「家電・スマホ」の”二の舞”に
自動車産業は100年に1度の変化に直面
日産が抱える問題の背後には、自動車産業が直面している2つの大きな変化がある。 第1は、エンジン車からEVへの移行だ。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の新車販売に占めるEVの比率は、2035年には50%以上になる。 第2は、自動運転だ。 ガソリン車からEVへの転換が必要なのは、地球温暖化対策として必要だからだ(中国の場合には、給油システムを広い国土に整備することが困難であることや、原油を国内で産出しないことも、EV転換の大きな理由になっている)。 これは、社会全体の立場から見て必要なことである。しかし、個人の立場から見れば、そのメリットは感じられない。だから、EVには補助や規制が必要になる。そのため、EVの普及は、政策によって大きな影響を受ける。 それに対して、自動運転車のメリットは、個人の立場から見ても明らかだ。前回述べたように、免許証なしで利用できること、自分が使わない時にタクシーとして運用できるのは、大きなメリットだ。安全性が確保できれば、国の政策とは無関係に確実に増加する。そして社会構造を変えていく。
すり合わせが重要でなくなる
前項で述べた変化によって、自動車製造の構造が、現在のものとは一変する。これは、「100年に1度の変革」と言われる。 日本の自動車産業が強かったのは、複雑な部品をうまく組み合わせるという「すり合わせ」技術の高度さによる。これには、日本型終身雇用制度の中で訓練された熟練工が大きく寄与した。 ハイブリッドカーになると、動力系統が2つあるのでさらに複雑になり、すり合わせの重要性はさらにます。 しかし、EVになると、事態は変わる。個々の部品は非常に重要だが、それらを組み立てることは、電気機器の組み立てと同じようなものになってしまう。だから、すり合わせは重要ではなくなるのだ。 そして、自動運転になると、自動車製造の構造が現在のものとは一変する。必要とされるのは、機械工学の技術というよりは、AIの技術になるからだ。 こうした変化に対応するため、大規模な社内改革が必要になる。いらなくなる人材や部署を整理し、必要な人材や部署を増強する必要がある。しかし、日本型経営では、こうした大改革ができない。 では、こうした問題は、経営統合すれば解決できる問題だろうか? 統合すれば、かえって重点車種の選択などの経営方針が混乱してしまうというような事態には陥らないだろうか? 事実、半導体や液晶では、数社の該当部分を統合して国策会社が作られたが、成功したと評価できるものは1つもない。 問題は統合で解決できるようなものではなく、もっと根源的なものだと考えざるを得ない。