「こんなおもろい世界があんねんな」NON STYLEの石田明、舞台仕事で躍動する今
『M-1グランプリ2008』で優勝した実績を持つNON STYLEの石田明は、実力派の漫才師として知られている。優勝した直後は数多くのバラエティー番組に出演し、今でも幅広い世代のファンに支持されている。その後、相方の井上裕介の活動自粛・復帰など紆余曲折を経て、石田の心情にも変化が生まれてきた。
そんな彼は近年、舞台の仕事に力を入れている。役者として表に出るだけではなく、脚本・演出にも携わる。石田が「生の舞台」にこだわる理由とは。(取材・文:ラリー遠田/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
生の笑いの魅力
石田は貧しい家庭に育ち、子供の頃は家にテレビがなかった。姉に連れられてお笑いライブに足を運び、初めて生の舞台に触れて衝撃を受けた。
「こんなおもろい世界があんねんな、と思って。僕の求めてるのはこれなんや、っていう感じがありました」
その後、テレビで漫才を見てみると、生で見たときほどの面白さがないことに気づいた。
「機器を通すと音声とかもバランスを取ってしまうので、機械的な質感になるんです。やっぱり生の舞台でしか伝われへん感情とか笑いはあると思うんですよね」
石田はお笑いライブに熱心に通うようになり、お笑いそのものにのめり込んでいった。漫才を見ながらセリフを文字に起こして、なぜそのネタが面白いのかを研究したりした。その経験が芸人になってからも生き、緻密なネタ作りができるようになった。 「NON STYLEの漫才って発想は弱いんです。めちゃめちゃクオリティーが低いボケをどうやって面白く見せるかっていうのを追求してます。僕らほど見せ方に特化してる人は少ないんじゃないですか。昔は面白い人はあまり自分を演出しなかったんですけど、今は発想の面白い人が見せ方までがんばるようになっている。だから、日々どうやってバレへんように逃げ切ろうかな、って考えてますね(笑)」 NON STYLEは大阪で活動していた頃、観客からの人気に比べ、芸人からの評価は高くないコンビだった。当時は、同世代でも発想力に秀でた笑い飯や千鳥が『M-1』の決勝に進み、NON STYLEはなかなか結果を出せなかった。でも、石田はそんな状況に焦りを感じてはいなかった。 「『M-1』は面白い人が上がる大会やから仕方ないな、と思ってました。当時、笑い飯や千鳥の真似ごとをして自分の型を壊すやつがいっぱいおったんです。でも、身の丈に合ってないからうまくいかない。僕らはそのまま行ってたので、いち早く抜け出せたんだと思います」